ドイツのコロナ対応、なぜ称賛されるのか? ビル・ゲイツも認める危機管理
いまなお世界で新型コロナウイルス感染の拡大が止まらない。そんななかで、ドイツは新型コロナ危機の対応において欧州で一番安心できる国と称賛された。ドイツの危機管理マネージメントは、ビル・ゲイツ氏も高く評価しており、アメリカではメルケル首相を支持するメルケルマニア旋風が起こっている。
◆欧州一安心できる国
シュピーゲル誌に発表された報告によれば、新型コロナ危機の対応においてドイツは欧州で一番安心できる国と評された。この分析を行ったのは、ロンドンのシンクタンク「ディープ・ナレッジ・グループ(DKG)」だ。分析項目は、「感染確認後、外出や接触制限発令の導入日時と違反者数」「コロナPCR検査数」「感染者を受け入れる病院数や人口呼吸器つきの集中治療室ベッド数」など。欧州では1位ドイツ、2位スイス、3位オーストリアと続く。イタリアとスペインは最下位だった。世界では1位イスラエル、ドイツは2位、アメリカは70位と最下位だった。
ドイツでは、コロナ感染者の死亡者が少ない点でも注目されているが、どのような対応がなされているのだろうか。その一部を紹介する。
1. 十分なコロナPCR検査(週に35万から47万人実施)
2. 集中治療室の充実(コロナ以前は2万5000床、感染者確認後は4万床まで増設)
3. 入院患者や緊急ではない手術の先送り、コロナ感染者受け入れのための医療体制の整備(4月後半からは、徐々に一般患者の受け入れを再開)
4. 経済支援の迅速さ。コロナ対策では7500憶ユーロ(約87兆円)。ベルリン在フリーランサー対象に即時支援金の支給1人5000ユーロ(約58万円)。事業者や企業向けには個別の融資や救済基金を提供。雇用を保持するため短時間勤務(クルツアルバイト)を余儀なくされた従業員への助成金(給与の60%から87%の補償など)。
5. 人口1000人にあたりの医師数(4.3人と世界トップ)
6. 老人ホームおよび医療現場の介護士を対象としたコロナボーナスの支給。7月に1人当たり1500ユーロ(約17万円)を給与に上乗せする(支給額は雇用形態により異なる)
外出や接触制限令の導入後、市民は規制を真摯に受け止めた。目標を掲げると、それに向かって猪突猛進するドイツ人のポジティブな性格がいま、成果を表しているようだ。ジョンズホプキンズ大学によると、ドイツの新型コロナウイルス感染者数は16万6152人、回復者は13万5100人、死者は6993人(日本時間5月5日午後4時32分時点)。このところ、1日の感染者数は1000人を下回っており、規制の成果がみられる。
ドイツの新型コロナ感染者は、今年1月末にミュンヘン近郊の企業で確認された。感染者数も10人ほどで、政府の対応も迅速だった。感染経路や接触者を把握し、全員が治癒したことから、政府関係者もそのうち収束するだろうとみていた。ところがまもなく、オーストリアやイタリアでスキー休暇を過ごした人や2月のカーニバルパレード参加により、感染者は急増した。
こうした背景から、独政府は感染者拡大抑止策として、3月23日から外出と接触制限令を導入した。この時点ですでにドイツでは1日4000人以上の感染者が確認され続けており、全国的な制限はその後、2回延長され5月3日までとなったが、各州の判断で(全国には16州ある)段階的に、さらなる緩和も始まっている。
- 1
- 2