コロナで揺れるウーバー、エアビー……テック界の寵児たち

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 新型コロナウイルスの感染拡大が社会に広がりつつある現在、人々の動き回る自由、集まる自由を拠りどころとしていた威勢のいいテック企業に対する締めつけも始まろうとしている。

 たとえばウーバーの株価は3月初めから25%下落したほか、競合のリフトも28%下落した。同時期の市場環境は乱高下が激しかったものの、S&P500種株価指数の下落率は10%にとどまっていた。エアビーアンドビーやウィーワークをはじめ、かつて10億ドル以上の時価総額をつけた未上場の「ユニコーン」企業についていえば、状況はさらに不透明である。

 マーケティング企業メタフォースの共同設立者でニューヨーク大学の経営学教授でもあるアレン・アダムソン氏は、「どの企業にとっても、市場の圧力が物語っているのは、最も環境に適した企業が生き残ることだ。備えが十分でない状態でこの嵐に飛び込めば、望ましい成果は得られないだろう」と語る。

 エアビーアンドビーはほんの数週間前まで上場する構えを見せており、高騰を続ける株式市場の利点を享受しようとしていた。しかしいまや市場が動揺し始めているほか、外出する人が少なくなり、同社のサービスを頼りとしているホストからの非難を受けながらも数百万ドルの赤字が積み上がっているという。

 同社がゲストに対してペナルティなしで解約できると伝えたことに、ホストは怒りをあらわにしていた。先週には、宿泊キャンセルにより発生した損失を一部埋め合わせるため、ホストに対し2億5,000万ドル(約270億円)を支払うことで合意した。

 物件保有者が賃料を設定する業務を支援しているデータ分析企業のエアDNAによると、アメリカでエアビーアンドビーのホストが受ける影響は一様でない。ニューヨーク市の3月の予約件数は66%減少したが、郊外では都市部からの移住者が増えて予約が増加した。ニューヨーク州ウェストハンプトンビーチの予約件数は6倍に増えた。同じくシカゴの予約件数は先月11%減少したのに対し、車で行ける距離にある湖畔の都市、ミシガン州セントジョセフは4倍に増えた。

 アムステルダムでゲスト用ルームをエアビーアンドビーに登録しているケーリー・ギレンウォーター氏の場合、3月から6月にかけて20人のゲストが予約をキャンセルし、約1万1,000ドル(約118万円)の被害を受けた。同氏はエアビーアンドビーに対して損失分の補償を要求したが、補償の対象となるのはコロナウイルスが原因と特定できるキャンセル分に限るとの説明を受けている。予約ゲストのうち数人は、ホストに直接連絡してキャンセルを行った。同氏はゲストに返金したが、不運にも補償を受けられない可能性がある。エアビーアンドビーでは、この件に関して調査を進めているとしている。

 同社は4月6日、プライベートエクイティ企業のシルバーレイクとシックス・ストリート・パートナーズから救いの手を差し伸べられた。両社はエアビーアンドビーに株式と債券で10億ドル(約1,076億円)を出資したのだ。「エアビーアンドビーは危機的な状況を脱して、力強い回復をみせてくれるだろう」と両社はコメントしている。

 しかしウォールストリートジャーナル紙が7日に報じたところによると、同社は貸し付けに対して10%以上の利払いをしなくてはならないほか、固定費の削減や経営陣の補強を公約することになった。こうした条件の下では、従業員のレイオフ(一時解雇)などの費用削減策が実行に移されることが多い。記事に関する照会に対し、会社は回答を控えた。

 一方のウーバーでは、苛立ちを深める投資家に対し、同社が配車ビジネスで推進する積極的な事業拡張計画は順調に推移している点を強調している。競合のリフトと同じく、各州が自宅待機命令を強化するなかで配車の需要は行き詰まりをみせている。両社とも、食品その他の生活用品の配送事業が持つ意義を強調しつつ、ウイルス感染の影響をしのげるよう現金を確保する動きを取り始めている。

 ウーバーでは、今年の配車件数が8割減という最悪のシナリオでも、年末時点で40億ドル(約4,300億円)の現金を確保できると話している。しかしその場合でも、今年は約70億ドル(約7,530億円)の現金を失うことになる。自動運転車や空飛ぶタクシーなど、同社が掲げる壮大な目標の推進にとって障害となりかねない。

 それでも、アナリストの多くは強気の見方を維持している。ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダニエル・アイヴス氏は「ウーバーとリフトはいまでも成長と機会をつかむ好位置にある、という別の面が表れてくるだろう」と話している。

 ところが、運転手となると話が変わってくる。ウーバーとリフトで2年にわたり運転手をしているサンディエゴ在住のクリストファー・チャンドラー氏によると、配車を依頼する顧客がほぼ皆無となったことで収入の8割以上が失われたという。これまでの配車収入には及ばないが別の配送事業に仕事を切り替えたチャンドラー氏は「今月はどの公共料金の支払いをしないでおくかを決めるという、厳しい選択を迫られるだろう」と話している。

 あまり知られてはいないが、パンデミックからの恩恵に浴している企業もある。ビデオ会議システムを手がけるズームでは、この数週間で株価が高騰を続けている。11ヶ月前のIPO価格と比較して、株価は現在約4倍の水準にある。

 ミールキットなどの食材を生産するブルーエプロンは、株価が取引下限の1ドルを下回ったことで、ニューヨーク証券取引所から上場を廃止するよう圧力を受けていた。ところが3月以降、自宅待機命令が強化されて同社のサービスに対する消費者の需要が高まり、株価は3倍以上の水準に跳ね上がった。

 CBインサイツによると、時価総額が10億ドルを超えるスタートアップ、ユニコーンは世界に450社以上ある。同社共同設立者兼CEOのアナンド・サンワル氏によると、ビジネスモデルや経営スタイルが異なるため一律に論じるのは難しいとしつつ、新型コロナウイルスが経済に影響を与えている環境下では「スタートアップであるか否かにかかわらず、この状況をしのぐのは厳しい」と話している。

 サンワル氏は、新興テック系スタートアップの立ち上げにつながるアーリーステージのシード投資はすでに減少していると述べている。だが、これまでユニコーンのスタートアップに多額の出資をしてきた投資家は、出資先が破綻していくのを座視するのではなく、少なくとも売却に向けた手入れをするなどして健全性の確保に注力するとみている。

「一時的な落ち込みにすぎないのか、それとも見どころがない会社なのかを見極めるという難しい決定を投資家はしていくことになるだろう」と同氏は話している。

By BARBARA ORTUTAY, DEE-ANN DURBIN and MICHAEL LIEDTKE The Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP