19年ユーロ圏経済、13年以来の低成長 米中貿易戦争、ブレグジット響く

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 共通通貨としてユーロを採用している19ヶ国からなるユーロ圏経済は、精彩を欠いたまま2019年を終えた。昨年の経済成長率は、ヨーロッパが債務危機にあえいでいた2013年以来の低水準だった。

 欧州連合(EU)統計局によると、第4四半期(2019年10~12月)の実質経済成長率(速報)は前期比0.1%増にとどまった。ユーロ圏が債務危機問題に直面し、ユーロそのものが崩壊しかねなかった2013年第1四半期以来の低水準だ。

 2019年の経済成長率も前年比1.2%増にとどまり、0.2%減を記録した2013年以来の低さだった。

 1月31日に発表された統計データについて統計局から説明はなかったものの、世界中に影響が及んでいる米中貿易戦争をめぐる懸念によりユーロ圏経済が失速していることが明らかになった。中国との第一段階の交渉を終えたトランプ大統領は、今度は欧州に目を向けつつあり、アメリカ企業に対し不当な扱いをしているとして、EUに関税での脅しをかけようとしている。

 先月末に正式にEUからの離脱を果たしたが、イギリスをめぐる不確実性も経済や貿易の足かせとなっていた。

 四半期経済成長率は市場予測(0.2%増)を下回ったが、ユーロ圏の経済大国であるフランスとイタリアがそろってマイナス成長となった影響が大きい。フランスのGDPは0.1%減、イタリアは0.3%減だった。

 フランスでは当四半期、デモ活動に見舞われたことで家計の消費支出に相応の影響があった。フランス経済が予想外のマイナス成長となったのは、株価の下落が関係している。2020年第1四半期には相場が上向く可能性があり、その場合はフランス経済も回復するだろう。

 イタリアの経済成長率は2013年以来の低水準だった。GDPの内訳は公表されていないものの、多くのエコノミストは内需の低迷が要因とみている。

 スペイン経済は0.5%増の堅調な成長をみせ、ユーロ圏経済を一部下支えした。輸出が好調に推移した影響が大きい。

 ドイツをはじめとする多くの国のGDP統計は未発表のため、ユーロ圏の数字は今月改定される可能性がある。

 米中によるいわゆる第一段階の合意で両国の貿易をめぐる緊張が緩和され、イギリスのEU離脱をめぐる不確実性が解消されることで、ユーロ圏経済は今春に回復するとの希望的観測がある。

「景況感指数が最近改善傾向をみせていることからすると、2020年のユーロ圏経済は徐々に回復が見込まれる」と、オックスフォードエコノミクスの欧州担当エコノミスト、ロージー・コルソープ氏は述べている。

 統計局による別の発表によると、ユーロ圏の1月のインフレ率は前月の1.3%から1.4%に上昇した。エネルギー価格の上昇が主な要因とされている。食品やエネルギーなど価格変動の激しい品目を除いた1月のコアインフレ率は、前月の1.3%から1.1%に低下した。

 コアインフレ率の低下は、クリスティン・ラガルド新総裁をはじめとする欧州中央銀行(ECB)の政策担当者の懸念材料となりそうだ。いずれにしても、インフレ率はECBが目標としている2%を下回る状態が続いている。中国のコロナウイルス発生に続き最近の原油価格下落が継続する場合には、今後数ヶ月のインフレ率がさらに低下する可能性がある。

 ECBではインフレ率と経済成長率の引き上げを目指す政策を実行しているが、インフレ率目標の変更を含め、政策のあり方についての全般的な見直しも行っている。

By PAN PYLAS Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP