IS新指導者サルビ氏、“理想郷”奪還を呼びかけるのか?

バグダディ容疑者とされる人物|Department of Defense via AP

 今年に入り米イラン関係や新型コロナウイルスに世界の注目が集まるなか、IS情勢でも大きなニュースがあった。昨年10月下旬にイスラム国(IS)の指導者、アブ・バクル・アル・バグダディ容疑者がシリア北西部イドリブ県で殺害され、ISはその後継者としてアブイブラヒム・ハシミ・クラシ(Abu Ibrahim al-Hashimi al-Quraishi)氏を指名したが、英国のガーディアン紙は1月20日、その人物はアミル・モハメド・アブドル・ラーマン・マウリ・サルビ(Amir Mohammed Abdul Rahman al-Mawli al-Salbi)容疑者だと報じた。

 サルビ容疑者は、トルクメン系のイラク人(アラブ系の顔ではない)で、イラク北部のモスル大学でイスラム法の学位を取得し、ISの創設メンバーの一人であり、少数派キリスト教一派であるヤジディー教徒への奴隷政策で主導的役割を担ったとされる。以前にバグダディ容疑者と南部バスラにある米軍が運営する刑務所「キャンプ・ブッカ」でともに収容された過去があり、深い間柄だったという。同容疑者は、バグダディ容疑者の殺害から数時間以内に後継者に選ばれていたというが、現在、それ以上のことはわかっていない。

◆バグダディ容疑者殺害後の異様なIS
 筆者は、バグダディ容疑者殺害後のISを異様に思っている。なぜかというと、後継者の名前は発表されたものの、本人からの声明は何も出ておらず、プロフィールはおろか顔も明らかになっていないなか、アジアや中東、アフリカなど各地に点在するIS地域支部からは、新指導者(サルビ容疑者)に改めて忠誠を誓う動画が次々に公開されたからだ。

 一般的に、組織や会社でリーダーが代わる場合、新しいリーダーは部下からの支持を集めようと努力するだろうが、新しいリーダーについて顔も性格もわからないなかで、先に「支持します」というのは異様に映る。ISはもともと過激で常識が通用しない集団だからと言ってしまえばそれまでだが、それだけ強い思想的ヒエラルキーが維持されているのだろうか(密かに前もってそれについて組織間で情報を共有している可能性もある)。

Text by 和田大樹