日本語が世界に与える新たな価値観

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 私たち日本人が普段何気なく使っている43の日本語を英訳し紹介する本『Ikigai & Other Japanese Words to Live ByIkigai and Other Japanese Words to Live by』がロンドンの出版社Modern Booksから今年1月に刊行され、反響を呼んでいる。米ニューヨーク市立大学で日本研究部門の責任者を務めている言語学者、藤本まり氏がセレクトした「座右の銘にしたい」フレーズを、各単語の背景にある概念や文化的背景とともに解説する内容だ。

◆世界に紹介される日本語
 本書は日本語が持つ独自の表現を紹介する内容となっているが、辞書のように各語句の定義を連ねるだけではなく、英語圏の読者に向け言葉のニュアンスを説明する形で構成されている点が興味深い。

 たとえば、年月を経て生じる美しさを表す「渋い」というフレーズは、「穏やかさを重んじる美意識の一環。色あせて輝きが弱くなった状態を指す。この言葉は私たちに、年とともに良くなるものもある、それを忘れずに、と教えてくれる。渋さは初冬の葉の色や、机に置かれた古いティーカップに感じられるかもしれない」と紹介されている。藤本氏による本書内の説明文は、日本文化に精通していない人々が文化的背景をイメージしやすいだけでなく、私たち日本人にとっても、日常的に使っている言葉が持つ本来の意味を見つめ直す重要性を感じられるものとなっている。

Text by 菅原史稀