脱北者に染色体異常 核実験による放射能汚染か 韓国政府は発表せず

2018年に爆破された豊渓里核実験場|Voice of America / Wikimedia Commons

 韓国統一省が、北朝鮮の核実験場がある豊渓里(プンゲリ)近くに住んでいた脱北者から深刻な放射線被ばくの証拠を見つけていたと、韓国紙が報じた。核実験場の土壌や地下水が汚染されていると見られ、汚染された水が川を通じて海に流れ出ているという見方もある。

◆脱北者が被ばく 核実験場に異変?
 朝鮮日報(英文記事)によれば、統一省が調べた、豊渓里近くに住んでいた脱北者10人の体内における被ばく線量は、250ミリシーベルトを超えるものだったという。これは染色体異常を引き起こすのに十分な値だとしている。通常の生活をしている人がさらされる放射線量は、世界平均で年間2.4ミリシーベルトだ。

 5人からは、7~59の染色体突然変異が見られ、放射線レベルは279~1386ミリシーベルトだった。最も被ばくしていた48歳の女性は、豊渓里からわずか23キロのところに住んでいたという。豊渓里では、2006年から2017年までに6回の核実験が行われていた。

 韓国科学技術院のチョン・ヨンフン氏は、このような被ばくが通常の状態で起こるはずはないとし、核実験場のトンネルが崩壊している可能性を指摘する。どのように現場が管理されているのか早急なチェックが必要だと述べている。韓国統一研究院の元院長キム・テウ氏は、豊渓里のある吉州(キルジュ)などの住民は飲料水を地下水に頼っているとし、核実験場を通過する地下水が放射性物質に汚染されているという考えを示した。さらにこの水が黄海に流れ込んでいるという情報もあるという(朝鮮日報)。

Text by 山川 真智子