オリンピック競技開催の東北の自治体、政府からの資金援助なしに嘆き

AP Photo / Jae C. Hong

 東北地方、宮城県利府町。2020年東京オリンピックでは、この地でサッカーの試合の開催が予定されている。日本政府は、今回のオリンピックを東北地域の復興支援に活用すると公約している。ところがこの町の町長によると、町はここまで、政府から一切資金を受け取っていないという。

 日本政府と2020東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、今回のオリンピックを、2011年に発生した東日本大震災からの復興をアピールする機会として活用したいと考え、東北地方を会場に、サッカーや野球など複数のオリンピック種目の開催を予定している。

 ところが、オリンピック開会まで1年を切ったこの時期になって、宮城県利府町の町長を務める熊谷大氏が、利府町はここまで、政府からの資金援助を何も受けていないことを明らかにした。

「政府からの援助はないです。予算はまったくまわってきていません。2020年東京オリンピックは震災復興のシンボルだと言われていますが、予算に関して言えば、ここ利府町はオリンピック関連の予算を一切受けていません」と熊谷氏は14日に語っている。

 この熊谷氏のコメントは、2020年オリンピックで男子・女子サッカーの試合会場となる宮城スタジアム(4万9,000席)のメディアツアーのなかで飛び出したものだ。

 復興庁によれば、2019年8月の時点で、東北地方では約5万人がいまだに避難生活を送っている。

 宮城県女川町長の須田善明氏も、熊谷氏のコメントに同意した。太平洋沿岸の女川町もまた、東日本大震災では利府町と同様に甚大な津波の被害を受けた。

「私たちは日本政府からの補助金を1円たりとも受けていません。ですから、オリンピック会場の準備や、そこに来るビジターたちを受け入れる準備は、すべて自力でやらざるをえません」と須田市長は述べている。

 一部のメディアは、オリンピック関連事業が建築労働者を東北地方から奪って東京の建築現場に集める事態を招いており、かえって東北地方の復興努力の妨げになっていると批判している。

 日本は、世界でも有数の地震・津波の多発地域だ。 2011年3月11日、近海で発生したマグニチュード9.0の地震が津波を引き起こし、福島第一原子力発電所のメルトダウン事故の原因となった。地震と津波はとりわけ東北地方の太平洋沿岸に大きな被害をもたらし、1万8,000人以上の人命が失われた。

 東京都は、2013年に招致を勝ち取ったオリンピック招致計画のなかで、約7,000億円の費用を見積もっていた。しかし報道によると、オリンピックに向けた都市整備費用として、実際には約2兆円が支出されているという。

 この夏には、おもに外国人らで構成する反オリンピック活動家のグループが、「反五輪の会」と銘打って、小規模な抗議活動やイベントを開いた。彼らは、住宅問題や環境問題への対策予算が犠牲になっているとして、オリンピックへの支出に反対を表明している。

 また抗議グループは、東京の北東に位置する福島県の復興のためにより多くの予算を割くべきだと主張する。これに対し組織委員会側は、福島県は今回のオリンピックが重視している地域の一つで、そこでは野球、ソフトボール、サッカーの試合を予定しており、この地域が安全であることを世界にアピールする好機だと述べている。

 ここまで組織委員会は、オリンピックの開催準備にあたって数々の問題に直面してきた。今年8月の東京では、猛暑を理由にオリンピック女子トライアスロン予選会の短縮を余儀なくされた。東京の夏の猛暑は、来年のオリンピック本大会にも影響を与えるものと予想される。

 また、今年初めには、日本オリンピック委員会(JOC)会長の竹田恒和氏が、オリンピック招致レースにおいて支持票の買収計画に関与した疑いを指摘され、その後、6月に辞職に追い込まれた。竹田氏側は、不正行為に関与したことは否定しているが、約2億3,000万円の支出を承認した事実については認めた。フランスの捜査当局は、この支出の目的が「票の買収」だったと主張している。

Translated by Conyac

Text by AP