アメリカの「恥ずべき日」 銃規制強化、否決の内幕とは
アメリカ上院は17日、超党派の議員によって提出された銃規制強化法案について、採決入りが否決された。賛成54票、反対46票で、採決入りに必要な60票に届かなかった。この法案は、銃の所持について不適格者を見極めるため、身元確認システムの拡大を目的としていた。
続いて、殺傷能力が高いとされる半自動ライフルの製造と販売や、高性能爆弾掲載の雑誌発行の禁止に関する法案も、賛成40票反対60票で否決された。
国内で銃規制の声が高まる中、米国の銃規制が進まぬ実態を海外各紙が報じている。
【規制強化を求める動き】
2012年12月14日、コネチカット州の小学校で銃乱射事件が起き、子供20人を含む26人が犠牲となった。
事件後、アメリカ国内では銃規制を強化すべきという声が高まり、オバマ大統領も特別対策チームを編成するなど意欲を見せていた。
世論調査では、米国民の約90%が、銃所持者の身元確認について支持しているという結果を、フィナンシャル・タイムズ紙が報じている。
上院での否決が決まると、傍聴していた銃乱射事件の遺族からは、「恥を知れ!」などの怒号が飛んだという。
またオバマ大統領も、結果について、「今日は米国議会にとって、とても恥ずべき日だ」と述べ、厳しい非難の姿勢をみせたと各紙が報じている。
【規制強化を阻む力】
共和党議員の9割が反対票を投じ、賛成に回ったのは4名のみだった。逆に民主党議員で反対したのは4名のみだった(オバマ氏が大統領選で大差で負けた州の議員)。
アメリカでは、憲法で銃所持権利が認められていることもあり、米国民が感情的になりやすい問題と言われる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、反対派が、身元確認強化は政府による銃所有者のリスト作りにつながり、銃が取り上げられる可能性があると主張しているという。
全米ライフル協会は、銃規制法案は「正直な市民」どうしの銃の取引を犯罪とみなし、乱用による犯罪を減らすことにはならないと発言したという。協会は法案成立を阻止するため会員を動員し、電話、eメール、手紙、テレビコマーシャルなど、約50万ドルのキャンペーンを打ったと、ューヨーク・タイムズ紙が報じている。
今回の結果に、銃犯罪の被害者遺族や多くの銃規制賛成者は落胆したようだ。
ただ、現在は、長年成し遂げられなかった法案成立の可能性が大きい好時期だという指摘もある。オバマ大統領の再選、共和党の変化の兆し、コネチカット州の銃乱射事件による大衆の恐怖心などが、銃規制を強化する法を受け入れようという雰囲気を作っているとのコメントを、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は紹介している。