イラン核協議、成果なし 打つ手はあるのか?
イランの核開発問題をめぐり、国連安保理の5常任理事国とドイツ、イランの協議は、6日、2日間の日程を終了した。長らく平行線を辿り続けているこの問題について、結局、今回も進展がなかった模様だ。
【進展なしの理由】
今回の注目点の1つは、6ヶ国が2月の前回協議の際にイランに呈示した「公正でバランスの取れた」提案に応じず、独自の対案を出すと表明していた、イランの対応だった。
しかし、6ヶ国が協議後に表明したところによれば、イラン側は「最小限の提案と引き換えに、あまりにも不相応な見返りを要求」し、隔たりは大きかったという。結局決まったのは、各国が課題を持ち帰り、再検討することのみで、次回の会合の時期や場所も、未定のままだという。
ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、イランのアフマディネジャド大統領は協議後の9日、国内の原子力技術記念日の記念祝典で、「イランは今や核保有国であり、この称号を誰も盗むことはできない」とスピーチ。ウラン製造の持続と拡大を高らかに宣言したという。
【イランの地震と、原発への影響】
こうした中、9日からイラン南部では、マグニチュード6規模の地震が複数回発生した。ロイターによれば、少なくとも37名が死亡、負傷者は850人以上で、損害は4300万ドル規模にのぼるという。
欧米の専門家はかねてより、地質学的環境から大地震が多発する、イランでの原子力発電所の建設に、警鐘を鳴らしてきたという。特に、何十年もの歳月と多額の資金を注ぎ込んで完成された、「世界でもっとも高価な原子力発電所」と言われるブシェール原発には、多くの問題が指摘されている模様だ。
ただしイランは、ブシェール原発にまったく影響はないと発表している。かえって自信を深める結果となったようだ。建設したロシアの企業も、影響はなかったとしている。地震の数時間後には、イラン原子力機構は、同地域での原子力発電所の増設を発表したほどだ。
【各国の対イラン姿勢】
このように、西側諸国の説得に「聴く耳もたず」に思われるイランだが、フィナンシャル・タイムズ紙の報道によれば、希望的な姿勢がないわけではない。
イランは、「制裁解除」を条件に、兵器転用の可能性が強く指摘されてきた20%の濃縮ウランについて、協議の俎上に載せる意欲を示しているという。さらに、イスラエルが示した「レッドライン」を意識しているかのように、濃縮ウランを発電所に移すなど、「平和的利用」をアピールしているという。
こうした姿勢に対し、各国の対策にもばらつきが生じつつあるともされる。
ロシアには「核の平和的利用についてのイランの主権」を認めようとする動きもある。
一方、西側諸国、なかでもフランスはこれに猛反発しているという。アメリカとヨーロッパは独自の制裁を警告。オバマ大統領は協議後、「イランが核兵器を入手することは許さない」と繰り返し発言していたという。
その背景には、ゲーリー・サモア元大統領補佐官(核不拡散担当)が指摘するように、「20%の濃縮ウランは氷山の一角に過ぎない」との認識があるという。
イランの核関係施設の能力は飛躍的に向上しており、3.5%濃縮のウランでも、備蓄を続ければ、数年後には兵器に転用が可能になるとの見方もある。
【どうやって膠着を打破するか?】
専門家は、膠着状態を打破する手段を2つ挙げている。
1つは、一部の核濃縮能力の保持と保有を認め、協議を進めること。もう1つは、イランと経済活動を行う外国企業への罰則などの、制裁強化策だ。これは、すでにアメリカで法案化への着手が進められている。
またイランを揺さぶる有効な措置として、中国やインドを含むイランの原油購入国に、その停止を求めれば、そこで生じた「損害額」を補填する必要性にかられるかもしれないとも指摘されている。ただ、それをまかなう余力がアメリカにはない、というジレンマがあるという。
フィナンシャル・タイムズ紙は、イランとの核協議を「中東和平交渉」になぞらえ、先の見えない膠着状態としながらも、「何もせず、手をこまねいているわけにはいかない危険」を指摘した。
イランは6月に大統領選を控えており、秋に新大統領の体制が整うまで、手探りの交渉が続けられる見込みだという。