習近平主席の「オープンマーケット化宣言」に潜む、中国の本当の目的とは?

習近平主席の「オープンマーケット化宣言」に潜む、中国の本当の目的とは? 中国の習近平国家主席は、6日~8日まで開かれていたボアオ・アジア・フォーラム後の会見で、外資系企業に対し、知的財産権などの権利と利益の保護を約束した。
 また習氏は「中国の発展は著しいものから安定へと変化している」とし、近年鈍化している経済成長率に対し、持続性・安定性を重視していると述べた。
 各紙は会議の内容、中国国内で展開する外資産業の現状、中国が向かう方向性などを論じている。

 ボアオ・アジア・フォーラムには、20を超える外資/国内有名企業の経営者も出席し、習氏との懇談の機会が設けられた。主な議題は、中国展開する外資系企業が危惧する、様々なレベルの投資/市場参加制限だったようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ペプシコのアブダラ社長は、外国企業をもっと公平に扱うよう訴え、各種産業への参入障壁を軽減することを求めたという。
 この点についてフィナンシャル・タイムズ紙は、アメリカが中国国内で展開する10%程度のプロジェクトが中止や遅延に追い込まれたことを指摘。さらに、外資系企業が感じる中国の投資環境の改善率が、昨年より15%下落したと報じた(ただし、将来に対する見込みは明るいという結果も示している)。
 香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、中国と領土問題を抱える諸国の企業が、政治的な問題を利用して国内産を優遇する「お役所仕事」に悩まされている現状を取り上げた。尖閣諸島問題で揺れる日本の企業も、悩みながら「中国との関係性をより密接にする手助けをしていきたい」と述べていることを報じている。

 習氏がもう一つ明確にしたのが、中国の経済成長率についての見解だ。昨年は99年以降最も低かったが、これは世界情勢の悪化だけでなく、中国が融資や不動産市場を意図的に抑えたものによるからだ、と習氏はコメントしている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、背景として環境汚染の悪化を挙げた。中国は、インフラ投資などから、より消費に重視を置いた政策への展開を希望しているようだとみている。
 その点、「安定」を求める声が多数挙がっているようだ。習氏も、欧州の債務危機・失業者増にふれ、「安定性と確実性は経済復活の基盤となる」とコメントしている。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、「中国のウルトラ・ハイスピード成長率は終わったが、よりゆったりとし安定した経済的成長を望む。現段階の発展は安定してない故に、調整が必要になる」という習氏のコメントを掲載している。

 中国がここまで外資系企業に対して「お膳立て」をするのは、将来の輸出増加を睨んでのことだと予想されている。逆の立場に立った時に手痛い「しっぺ返し」を受けないため、ともフィナンシャル・タイムズ紙は指摘する。実際、習氏は「中国は投資家に対しもっと平等で、魅力的な市場を展開する。それと同様に、諸国も外部投資家に対してオープンになってほしい」とコメントしている。

 また、新しいリーダー・新しい中国をアピールしたい意図もあるようだという指摘もある。前任者の胡錦濤氏は、外資系企業の経営者と会談する機会はほとんどなかったという。習氏は、投資・企業活動の現状をふまえ、今後環境整備を考えていくとみられる。
 ただしフィナンシャル・タイムズ紙は、油断は禁物だとみる専門家のコメントを紹介している。具体的には、習氏の発言に具体性が欠けること、言及されている改革が現状に即しているか疑問であることなどだ。過去にも中国の指導者から似たようなコメントはあったが、大きな改善は見られていないことを指摘する声もあり、結局今後の具体的な政策次第では、という論調である。

Text by NewSphere 編集部