『原始家族フリントストーン』ハウス、当局から撤去指示 「迷惑で目障り」

AP Photo / Eric Risberg

 傾斜のある裏庭に並ぶ風変わりなキノコの群れ、そのなかにそびえ立つ恐竜……。玄関扉の近くには訪れる人々を出迎える等身大のフレッド・フリントストーン像が、そして芝生の上の小道にはオレンジや紫、そして赤のペンキで描かれた「ヤバダバドゥー」の看板が立てられている。

 サンフランシスコ郊外にある高級住宅地で、新たに法令と不動産権をめぐる戦いが勃発している。出版界の元大御所が、1960年代のアニメ「原始家族フリントストーン」の精巧なオマージュを作り上げたのだ。派手な球根型の家を囲むように、同アニメにインスパイアされた石器時代風の彫刻や、宇宙人などの奇妙な物体が並んでいる。

 双方の争いは世界のメディアにもこぞって取り上げられ、注目度抜群のこの家を「撤去しないでほしい」というオンライン嘆願書が何千件も集まる事態にまで発展している。この家は、近隣の主要幹線道路からも見ることができる。

 254平方メートル(約76坪)の家自体に危険はないもののヒルズバラ当局は、時価数百万ドルといわれるフローレンス・ファング氏の不動産は地域住民にとって「迷惑で目障り」だとしている。

 地元当局は3月、州裁判所に庭の陳列物が無許可であるとして、撤去を求める申し立てを行った。ファング氏自身はこの家には居住しておらず、あくまで娯楽目的で利用している。

 ファング氏(84歳)の弁護士は、「お高く留まった役人は、自分の庭を楽しみたい、という憲法で保障されたファング氏の権利を踏みにじろうとしている」と、断固として抗戦を誓っている。

「ファング夫人は人々を笑顔にし、喜びを与えています。犬のようにふるまう恐竜の、何が気に入らないのでしょう?」と元サンフランシスコ市管理委員である弁護士のアンジェラ・アリオート氏は言う。「彼らはどうかしているのではないでしょうか」。

 赤と紫に塗装された奇妙な形のこの家は、1976年に建築家ウィリアム・ニコルソン氏が設計、建設を手がけた。日刊紙「サンフランシスコ・エグザミナー」の発行者を経験し、慈善家としても著名なファング氏は2017年6月、280万ドル(約3億円)でこの不動産を購入した。

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 風変わりな前庭には「ヤバダバドゥー」に登場するフレッドとウィルマ、そしてバーニーやベティの像が置かれ、「恐竜進入禁止」と書かれた看板には紫色の恐竜のイラストが描かれている。カラフルなキノコの彫刻が前庭や裏庭に点在し、当局が「危険」だとする急な階段は、金属製の巨大な先史時代の動物たちが待つ庭園へと続く。

 ヒルズバラ側の弁護士マーク・ハダック氏は、「都会の喧騒を離れた森にいるような雰囲気が、この町の誇り」であり、規則は「住民が互いに、互いの勝手な嗜好を見せつけられることなく暮らす」ためにあるものだと話している。

 ハダック氏は「この事件は単純です。ファング氏の作品が愉快な漫画のキャラクターであれ、ロダンの彫刻だろうとなんだろうと、ほかの方々と同じプロセスを踏まなければなりません」と言う。

 USF スクール・オブ・ローで不動産学を教えるティム・イグレシアス教授は、政府は公共の安全を守るための規則を執行し、不動産の所有者が他の不動産所有者の権利を侵害しないよう保証する権利があると話す。アメリカでは植民地時代から私有不動産を規制してきたという。

 しかし、3月13日に提出された訴状内容のように、家の持ち主が市の工事中止命令を3度も無視するケースは珍しいとイグレシアス氏は言う。ほかにも、ファング氏は2018年12月5日までに設備を撤去するという行政命令を無視し、200ドルの罰金を支払っている。

「今回のケースは、非常に裕福で洗練された住宅所有者であるファング氏が、そもそも一貫して市を馬鹿にしている、という状況です。もしファング氏を放っておけば、ヒルズバラにいる他の富裕層が皆、『自分の不動産なのだから、何をしてもいい。役所のことなど、気にすることもない]と言えるようになってしまいます」とイグレシアス氏は語る。

 先日、各メディアは「ファング氏が今回の告訴に対して、反訴する意思がある」というアリオート氏の言葉を伝えた。しかし、詳細については語られていない。同氏は、「ファング氏の言論と宗教の自由という憲法上の権利が侵害された」と述べているものの、ファング氏本人が直接インタビューに応じることはなかった。

「彼らはすべてを撤去したいのです。あの恐竜たちが邪魔なのです。彼らの要求は、恐竜の前に木を置いて、人目につかないようにしろ、というものです」とアリオート氏は言う。

 カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロー・スクールで民事訴訟および救済を専門とするデビッド・レバイン氏は「不動産所有者というのは、許可にかかわる規制を軽視しがち」だと話す。通常、所有者は罰金を支払ったうえで、安全性に関わる問題点を改善することになる。

 さで、法廷で勝つのはどちらになるだろうか?

「一体誰が間違っているのか、判断しなければなりません。間違っている方を規制することになります」とレバイン氏は話した。「すべての申し立てを無視した住宅所有者がおかしいのか、それともウィルマとベティのことが嫌いだと言っている者たちがおかしいのか、ということです」。

By JANIE HAR Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP