気候変動、バングラデシュの1900万人以上の子供に影響 国連が警鐘
国連の児童機関であるユニセフ(国連児童基金)は5日、気候変動にともなって壊滅的な洪水やサイクロンなどの環境災害が発生しているバングラデシュでは、1,900万人を超える子供たちの命と未来が危険にさらされていると発表した。
ユニセフのレポートによると、ベンガル湾沿岸のコックスバザール地区にある難民キャンプには、ミャンマーを逃れたロヒンギャ難民の子供が大勢暮らしており、彼らもまた今回の推計人数に含まれているという。
130を超える河川が縦横に流れるバングラデシュは、低地のデルタ国家だ。同レポートでは、耕作地の塩害や洪水、河川の氾濫によって村を追われた人々が大都市に移住し、生活のために性的人身売買や結婚を余儀なくされていると記されている。
AP通信の報道によると、ユニセフダッカのジャン・ジャック・シモン広報官は「最も被害が深刻な被災者のうち、約1,200万人の子供たちが氾濫を繰り返す大規模な河川系とその周辺に暮らしている」と述べている。
「大都市では、毎日のように何千人もの子供が両親とともにやってきます……彼らはあらゆる搾取にとても脆弱なのです」とサイモン氏は語る。
猛烈なサイクロンに見舞われることの多い広範な沿岸地域にも450万人の子供たちが生活しており、そのうちの約50万人がロヒンギャ難民で、竹やプラスチック製の壊れやすいシェルターに暮らしているという。
さらに300万人の子供たちは内陸部で生活しているが、深刻な干ばつ被害が頻発し、現地の農村は大きな打撃を受けている。
今回の報告書では、2050年までにはバングラデシュの気象難民は現在の600万人から倍増する恐れがあると予測している。
ロンドンを拠点とする国際環境開発研究所のサリーマル・ハック上級研究員は「脅威は本物」と話す。
「バングラデシュは見事に復興しているものの、引き続き気象変動がもたらす危険にさらされており、子供たちはとても脆弱だ」とハック氏は語る。
人口1億6,000万人のバングラデシュは、過去に何度も壊滅的なサイクロンや洪水に見舞われた歴史をもつ。1970年、南部地域(旧東パキスタン)を襲った巨大サイクロンは30万人もの死者を出す大惨事となった。バングラデシュが独立を勝ち取ったのは翌1971年のことだ。
1991年には猛烈な熱帯低気圧がバングラデシュ南東部を襲い、13万8,000人を超える住民が犠牲となった。その後、死者数は大幅に減少したものの、引き続き広範な沿岸地域が高潮による浸水被害に遭い、家屋が破壊され、海水が内陸部にまで押し寄せた。
ユニセフのレポートによると、1990年代初頭から災害対策およびリスク軽減プログラムへの投資や活動が行われるようになり、地域社会が気候変動による危機からの復興力を増してきたという。
バングラデシュでは数千棟ものサイクロンシェルターを建設し、訓練を受けたボランティア数千人の広大なネットワークを構築するなど対策を強化し、大規模な嵐の襲来時には住民の避難や基本的な医療支援が実施された。このことは、国連を含む世界的なパートナーにも高く評価されている。
全国各地に洪水防御堤防も建築されてきたが、バングラデシュの地理的条件が洪水や海面上昇に対して脆弱であることに変わりはない。
最近では2017年にブラマプトラ川が大洪水をおこし、少なくとも480の地域診療所が浸水被害を受け、コミュニティに安全な水を届けるのに不可欠な手押し式の掘り抜き井戸5万個が損傷したと報告されている。
これほどの災害に見舞われたにもかかわらず、4日に世界銀行が発表した報告書によると、バングラデシュは過去10年間で年間平均6%以上の成長を遂げており、世界で最も経済成長率が高い5ヶ国の1つに数えられている。今年度(2019年6月末まで)の成長率は7.3%と予測されている。
それでも、同国政府の野心的な開発アジェンダも空しく、バングラデシュの人々は気候変動の影響によってさらなる貧困にあえぎ、退去を余儀なくされているのだという。その過程で、子供たちは教育や医療支援を受けられなくなり、事態は深刻だ。
今回のレポートよると、3月にバングラデシュを訪問したユニセフのヘンリエッタ・フォア会長は、「気候変動により、バングラデシュ最貧地域の家庭は深刻な環境の脅威にさらされており、子供たちにとって適切な住環境や食事、健康、そして教育を確保できなくなっている」と述べている。
「気候変動によって、国家が子供の命と発達のために成し遂げてきたことが覆される恐れがある。これは、バングラデシュだけでなく、世界中で起きうることだ」と、フォア氏は言う。
By JULHAS ALAM Associated Press
Translated by isshi via Conyac