中国、国民を「社会信用」ポイントで管理 低いと旅行禁止などの罰則
中国で罰金の支払いを怠ると、航空券を買えなくなる。
中国では「社会信用システム」が議論を呼んでいる。中国独裁与党の共産党は、このシステムによって旅行を計画した人々の航空券購入がブロックされた回数は昨年1年間で計1,750万回にのぼり、このことによって国民の行動が改善するだろう発表した。
中国国営の信用情報バンク「国家公共信用信息中心」の年次報告によると、列車の切符購入を差し止められた人数は約550万人で、そのほか128人が税金の滞納を理由に中国国外への渡航を禁じられた。
中国共産党は、「社会信用」に基づいて国民に処罰や優遇措置を与えることにより、急速に変化し続ける中国の社会秩序を改善できるとしている。その背景には、30年にわたる経済改革によって中国の社会構造が大きく変化を遂げ、現在市場には偽造品が氾濫し、詐欺行為が蔓延しているという現実がある。
この新たなシステムは、データ処理から遺伝子配列、顔認識に至るまでの新技術を統制強化に応用しようという、習近平政権が主導する政府の取り組みの一部である。
2014年以来、中国当局は国内各地で「社会信用」の実験を行ってきた。地域によっては、「リードを付けずに犬を散歩させた」などの軽微な違反でも減点の対象とされ、法律違反をするたびに信用ポイントが減る。
人権活動家らは、この「社会信用システム」はあまりにも厳格で、人々は自分自身が社会的信用を失った事実を告げられぬまま、また、それをどのように回復したらいいかも知らされぬままに、不当に「信頼できない人々」と格付けされる危険性があると指摘する。
昨年10月、アメリカ副大統領のマイク・ペンス氏は「全体主義の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの小説を彷彿させるこのシステムは、実質的に、人間生活のあらゆる面をコントロールすることを前提にしている」と非難した。
中国共産党は、2020年までに中国全土を網羅した「社会信用システム」を導入する計画を発表している。だが、その具体的な運用方法については現時点まで何も説明していない。
想定される罰則としては、旅行、ビジネス、教育サービスに対するアクセス制限がある。中国国営メディアは、「いったん信用を失うと、あなたはあらゆる場面で規制を受けるでしょう」というスローガンを繰り返し伝えている。
また、ブラックリストに載った企業が政府との契約を解消されたり、銀行からの融資が受けられなくなったりする可能性がある。
「国家公共信用信息中心」によると、昨年この「社会信用」に基づいて罰則が課せされたケースでの具体的な違反内容は、法人税支払いの不履行、虚偽広告、薬品安全基準違反など幅広い分野に及んだ。そこでの個人への罰則としては、上級管理職に就くことを拒否される、会社の法定代理人として行動することが認められない、などの措置が計29万件あった。
同センターは今のところ、実際に「社会信用システム」が試験運用されている地域の人口数の詳細については明らかにしていない。
しかしながらこの「社会信用」は、共産党が現在進めているコンピューターの演算能力や人工知能、そのほかの革新技術を中国国民の追跡管理に応用する取り組みの一部に過ぎない。
中国公安省は2000年、個人追跡のための全国的デジタルネットワーク構築を目指し、「金盾」と呼ばれるオンライン検閲システムの稼働を開始した。
中国共産党は、顔認識システムの拡大展開に多額の予算を割いている。また人権活動家らによると、中国当局はイスラム教徒その他の少数民族地域の人々に対し、遺伝子データベース向けの血液サンプルの提供を強要しているという。
一方でこれらのシステムは、実際には中国国外の技術に大きく依存している。このことから、アメリカやヨーロッパの技術企業こそが人権侵害を幇助した共犯だとの批判も上がっている。
マサチューセッツ州ウォルサムに本社を置くサーモフィッシャー・サイエンティフィック社は、同社の技術が中国の国民監視のために流用されたとの批判を受け、今後はイスラム教徒が多数派を占める新疆ウイグル自治区において遺伝子配列解明技術の販売とサービス提供を行わないことを2月21日に表明した。
アメリカ当局者と国連の専門家によると、中国の新疆ウイグル自治区では、政治矯正キャンプに収容されているウイグル人、カザフ人やその他のイスラム教徒少数派の数が100万人にのぼる。一方、中国政府側は、これらのキャンプはあくまでこの地域から過激思想を取り除くために建設された職業訓練センターに過ぎないと主張している。
By JOE McDONALD, Associated Press
Translated by Conyac