ムシャラフ元大統領、パキスタンに帰国 その影響とは?
24日、パキスタン・カラチの空港に、2008年以来英国などに事実上の亡命中であった、パルヴェーズ・ムシャラフ元大統領が降り立った。各紙は、ムシャラフ氏は5月の選挙で返り咲きを狙って帰還したものの、氏の思い通りにはならないだろうとの見方で一致している。
ムシャラフ氏を出迎えた支持者は、電力不足やインフレなどで混乱する現在よりも、ムシャラフ政権時代の方が経済状態が良かったことを訴えている。しかし空港にやってきた支持者はわずか数百人であり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ジャーナリストの数をかろうじて上回った程度だったという。同紙は、空港に入ろうとした支持者が入場を許されず締め出されたことも伝えてはいるが、専門家によれば、氏の支持基盤はむしろパキスタン国外にしかないという。
ニューヨーク・タイムズ紙も、ムシャラフ氏帰還のニュースは、パキスタンではホーソ暫定首相就任のニュースに埋もれてしまっていると報じた。各紙とも、来たる選挙でムシャラフ氏の勝機はないと見ている。
またムシャラフ氏は、2007年のブット元首相暗殺疑惑をはじめ、多数の人権侵害で告発されている。人権監視団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ムシャラフ氏が「重大な法的手続きを逃れることは、許されるべきではありません」などと声明した。さらに、氏が米国主導の対テロ戦争に積極協力していたことから、イスラム過激派タリバンが氏の暗殺予告を出す事態になっている。政権復帰どころか、命さえ危うい状況だといえる。
パキスタンの歴代政権はいずれも軍部の介入、ないしはムシャラフ氏自身も行ったようなクーデターのため、任期を全うできた例がなかった。各紙は、来たる選挙で民主的に政権交代が行われれば、それはパキスタン独立以来初の快挙だと指摘する。しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「もし彼が過去の行動のために逮捕され審問されるなら、軍を刺激します。彼が自由になったなら、シャリフ(首相)とブット両方の支持者から反発を巻き起こすでしょう」との、専門家の危惧も伝えている。