スポティファイ、ポッドキャスト2社買収 ネットフリックス式を模倣
スポティファイがポッドキャストに参入する。ネットフリックスが動画の世界でオリジナル作品を制作して成功を収めたが、スポティファイはこのビジネスモデルを模範とし、オーディオの世界へ取り入れようと狙いを定めたようだ。2月6日、音楽ストリーミング配信のパイオニアである同社は、ポッドキャスト企業のギムレットとアンカーの2社を買収して傘下に収めた。
ストリーミングは音楽を聴くための方法として最近ますます人気が高まっているが、スポティファイやパンドラなどの配信サービス企業は、レコーディングレーベルやソングライター、アーティストにロイヤリティを支払う必要があるため、利益を生み出すことは簡単ではなかった。
買収の当日、スポティファイの最高経営責任者であるダニエル・エク氏は、CNBCのインタビューに対し、「この買収は、我々のミッションを単なる音楽配信からすべてのオーディオに関する配信、そして、世界をリードするオーディオプラットフォームの提供へと拡充することになる」と述べている。
スポティファイは買収の条件を明らかにしなかったが、ウォールストリートジャーナルが報じたところによると、ポッドキャストの制作と配信を行うプラットフォームを運営するアンカーには1億5,000万ドル以上、そして、ギムレットには2億ドル以上の資産価値があると関係者らが評価していると報じた。ハイエンドなポッドキャスト制作を行うギムレットは、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のラジオショー、「ディス・アメリカン・ライフ」の敏腕プロデューサーであるアレックス・ブランバーグ氏によって共同設立された。
スポティファイはストックホルムを拠点とし、2018年4月には株式を上場し、月額10ドルの料金で「プレミアム会員」に対して広告のない音楽配信を提供している。さらに、月額無料で広告のある音楽配信サービスも提供している。
技術系の最大手企業であるアップルが2015年に独自の音楽ストリーミング配信サービスを開始して以来、アップルは、スポティファイの最大のライバルとなっている。しかし、業績は打撃を被ったものの、スポティファイは配信サービス加入者数の点ではアップルより一歩先をリードすることに成功し続けている。スポティファイのサービス加入者数は第4四半期に9,600万人に達し、1年前に比べて36%増加した。
一方、アップルの最高経営責任者、ティム・クック氏によると、5,000万人を超える加入者がアップルの音楽ストリーミング配信サービスを利用しているという。パンドラ、ユーチューブ、アイハートラジオ、グーグル、アマゾン、そして他の企業も音楽およびポッドキャストの配信を行っている。
2月6日にエク氏はブログに投稿し、スポティファイは2年に満たない短期間で世界第2の規模を誇るポッドキャスティングプラットフォームに成長したと述べている。
エク氏は、「形態は日々進化を続けており、ポッドキャスティングは現在まだ、比較的小規模なビジネスではあるものの、目覚ましい成長を遂げる余地があり、特にスポティファイにおいては大きな可能性に満ちていると私は考えている」と語る。
たいていの場合、ポッドキャストを聴く方法はたくさんある。ストリーミングサービスを利用して聴く、ダウンロードして聴く、そして、キャストボックスやステッチャーのようなポッドキャストに特化したアプリを使って聴く、などの方法だ。スポティファイが新しく獲得したポッドキャストを独占的に配信するのか、それとも幅広く利用できるようにするのか、または、スポティファイの独占権の範囲内で他のサービスにポッドキャスト配信を許可するといった中間的な手法を取るのかは明確にしなかった。AP通信は、スポティファイにコメントを求めたが、同社は応じていない。
スポティファイは、持続可能な収益を確保する方法を模索している。同社によると、感謝祭から年末までのホリデーシーズン中は、購買意欲の大きな高まりとスマートスピーカー、グーグルホームの販売プロモーションによる追い風を受けた。第4四半期の業績は驚くほどの伸びを示したという。しかし、独自コンテンツの制作に投資を続けているにもかかわらず、2019年には損失の計上を予測している。
スポティファイは、コメディエンヌのエイミー・シューマー氏を起用したシリーズ作品や、ラッパー兼ブロードキャスターのジョー・バドゥン氏が出演する作品を含め、既にいくつかの独自のポッドキャストを制作している。
エク氏によると、スポティファイを通じてポッドキャストを聴く人々は、他のユーザーより2倍長い時間を費やして同社のサービスを利用しているという。
スポティファイは、自社オリジナルのショーや映画の制作に何十億ドルもの資金を投じているネットフリックスを模倣したいと望んでいる。これまでネットフリックスはこの戦略によって、「ストレンジャー・シングス」やスリラーの「バード・ボックス」のようないくつかのヒット作品を生み出している。
映画業界に比べてポッドキャスト業界は遥かに小規模だが、着実に成長路線を歩んでいる。文化的現象にもなった殺人事件を究明する2014年の徹底調査報道シリーズ、「シリアル」の成功によってポッドキャストは一躍スポットライトを浴びてメインストリームに躍り出た。そして単に数千万のダウンロード回数を記録しただけでなく、最終的に有罪判決が下りた殺人犯人に対する新たな裁判が行われることにもなった。
インタラクティブ・アドバタイジング・ビューローとプライスウォーターハウスクーパースが実施した調査によると、アメリカのポッドキャスト広告収入は、2017年に86%伸長し、3億1,400万ドルに達したという。この数字は、2017年には合計119億ドルに達したデジタルビデオ広告に対する支出に比べると影を潜めてしまうのは事実だ。
エジソン・リサーチによると、およそ7,300万人が毎月、何らかの方法によってポッドキャストを聴取しているという。そしてポッドキャストは、多くの企業が望む「ミレニアル」世代の購買層に特に人気が高い。
今回の買収は、第1四半期に完了する見通しだ。そしてエク氏は、スポティファイの企業買収はこれで終わりではないと語る。同社は2019年、企業の買収に4億ドルから5億ドルを投じる予定である。
By MAE ANDERSON, AP Technology Writer
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