アメリカ、「政府機関閉鎖」の危機は回避 それでも残る懸念とは?
21日、米下院の本会議で、今年度末(2013年9月)までの暫定予算案が、賛成318、反対109で承認された。同法案はすでに20日、上院を通過しており、オバマ大統領の署名を経て成立する。これにより、現行の暫定予算案が期限切れを迎えることで一部政府機関が閉鎖されるという「異常事態」はひとまず回避され、民主・共和両党にとっては、財政再建協議を進める猶予が生まれた格好だという。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、成立した暫定予算案は、両党にとって稀にみる超党派の妥協策だという。下院歳出委員会のロジャース委員長は「全力を傾ければ、複雑で困難なことでも成し遂げられることが証明された」と胸を張っていると報じられた。
具体的には、国防総省の関連予算強化を目指す下院共和党の意向と、国内向けの福祉を充実させたい上院民主党の意向が盛り込まれたとされる。850億ドルの国内および防衛予算の一律削減を義務付ける条項を維持することで共和党の面目を保ちつつ、その適用に柔軟性を確保し、各部門の重要度に応じて幅を持たせることで、政府・民主党に配慮した格好だ。同紙は、両党の「妥協」の陰には、両党の膠着状態によって一向に危機打開のめどがたたないことに対し、国民の厳しい目が向けられていることへの意識があったと、皮肉混じりに分析している。
今回も大きな山を一つ越えたとはいえ、8月には次の危機である債務上限問題が控えている。ニューヨーク・タイムズ紙は、ベイナー下院議長が21日の記者会見で、「相応の歳出削減がないかぎり、債務上限の引き上げは認められない」との強硬姿勢を示しつつ、「8月が楽しみだ」と語ったと報じた。共和党は1月に5月19日までの債務上限引き上げに同意したが、一旦収めた矛を再び抜き、債務上限を交渉材料にする可能性を示唆したとみられる。
下院では暫定予算案に続いて、共和党のライアン委員長による、10年以内の財政赤字の解消を目指す14年度予算案が、221対207票で可決された。新たな増税は行わず、オバマ大統領が主導して成立した医療保険法に絡む予算項目を主とする社会保障費などの削減で予算均衡を目指す「超緊縮型」。党派色が極めて強く、成立の可能性は極めて低いとされる。
一方上院でも、民主党側が今週、独自の予算案を可決する見込みとなっているという。こちらは、1兆ドル近い増税を盛り込む一方で、社会保障費の抑制は小幅とみられる。共和党予算案とは対照的で、共通なのは「党派色が極めて強い」ことのみであり、やはり成立には至らないとの見方が濃厚だという。
今回の海外各紙の報道は総じて、国家的な混乱回避という大義と厳しい世論の前に一旦は手を結んだものの、民主・共和両党の溝が依然として広く深いことを改めて浮き彫りにした。
フィナンシャル・タイムズ紙は、オバマ大統領が最近、共和党内の理解者との連携を深めようと試みていることを評価する識者の談を紹介し、このような働きかけを継続し、理解者の輪を拡大できるかが今後の鍵だとしている。両党の溝が今後埋まっていくのか、注目される。