iPhoneも販売不振、スマホの成長はピークを超えたのか?

AP Photo / Mary Altaffer

 iPhoneの販売が低迷しているというニュースの背後に、スマートフォンを取り巻く厳しい真実が見え隠れする。ハイテク業界は、スマートフォンの絶頂期を通過した。スマートフォンの購買者たちはすでに1台目を所有しており、かつて短期間で新しい端末に買い替えていた人々も、以前ほど頻繁に新調しなくなった。今、市場は転換期を迎えている。

 一部のメーカーは、小売価格を引き上げて販売利益を維持しようと試みている。しかし、アップルの販売不振はこのような戦略が通用しなくなっていることを浮き彫りにした。アップルはiPhoneの求心力が低下している上、中国での販売低迷が主因となり、2018年の第4四半期の売上高が当初の予想よりも低くなる見込みであると発表した。

 この知らせを受け、アップルの株価は1月3日に10%も急落した。これは、2013年以降で同社株価の最大の下げ幅となった。テクノロジー企業の株が軒並み大量に売られるなか、アップルの時価総額は746億ドルも下がった。この下落は過去7年間で最悪の規模である。

 調査会社ウェッドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイブス氏によると、アップルの販売不振のニュースは「ハイテク業界に警鐘を鳴らしている」という。

 さらに、これはアップル固有の状況ではない。おしなべてスマートフォンが輝きを失いつつある、とアイブス氏は語る。長きにわたりスマートフォン販売の先駆者だったサムスンの状況はさらに深刻だ。同社のスマートフォンの出荷台数は、昨年9月までの12ヶ月間で8%減少した。

「スマートフォン業界は激しい逆風にさらされている。かつて、スマートフォンのメーカーは十代の若者のように勢いがあり、誰もがスマートフォンに対し夢中になっていた。それが今では、成熟の極みに到達し、みな高齢者のようになってしまい、そう簡単には動じることがなくなった」とアイブス氏は述べた。

 2010年台初期に見られたスマートフォンの飛躍的な技術革新は、毎年新しいモデルが発表されるたびに、画面の大きさ、解像度の高さ、バッテリーの駆動時間、カメラの性能やプロセッサの処理速度に劇的な進化をもたらした。

 しかし、いまやスマートフォン業界にとっては自身の急速な成長があだとなっている。アップルがiPhone 6とiPhone 6 Plusで画面のサイズを拡大した2014年ごろから、技術革新の速度に陰りが見え始めた。スマートフォン自体は進化を続けているものの、すでに十分な性能を誇るカメラに対し新しいフラッシュが追加されるなど、新しい特徴があくまで機能の追加程度にとどまりがちになった。一般消費者は、こういった地味な機能の追加に気づかないことも多い。さらに、小規模な機能の追加のために大枚をはたこうとする人々もさほど多くはない。

 アイブス氏は、「iPhone 6の登場以来、技術革新だけではさらなるスマートフォンの進化や普及をもたらさないことが明るみに出た」と語る。

 アップル製品のユーザーは、3年前には24~25ヶ月毎にiPhoneを買い替えていたが、現在では、買い替えの期間は平均して33ヶ月に伸びているとアイブス氏は言う。

 アップルの売り上げ不振の見通しに対しては、中国での販売急落が大きく影響していることから、世界第2位の経済圏が失速しているという懸念が強まった。経済の不況とアメリカとの貿易戦争に翻弄されている中国の人々に対し、1,000ドルもの高価なiPhoneを販売するのは並大抵のことではない。しかも中国には、iPhoneの競合となりうるファーウェイ、シャオミ、オッポなど、国産ブランドの選択肢が豊富にある。

 業界の帝王であるアップルですら苦境にあえぐようになったという事実は、大手スマートフォンメーカーにとっても喫緊の懸念である。スマートフォン市場の動向の観測を続けているインターナショナルデータコーポレーション(IDC)によると、この10年間順調に右肩上がりの成長を続けてきた、全世界のスマートフォン年間出荷台数は2018年に初めて減少に転じ、3%低下して14億2,000万台となった。IDCは、2019年になるとスマートフォンの出荷台数は立ち直り、3%増加して14億6,000万台に達すると予測するが、それでも2017年の出荷台数には届かないという。

 価格が1,100ドルのiPhone XS Maxや、1,000ドルのサムスンのGalaxy Note 9など、4桁の値札をつけたハイエンドなスマートフォンのトップモデルを投入してもこの状況は変わらない。最上級機種であるiPhone XS Maxは、アメリカでは1,450ドルもの値札をつけて販売されている。

 最先端テクノロジーに精通し、コネチカット州フェアフィールドに住む31歳のザカリー・パルデス氏は、「実際に使用する便利で革新的な機能はほとんど提供されなくなっているのに、値段がどんどん高騰している」と不平を漏らす。パルデス氏は、「電池の寿命が尽きたら、スマートフォンの買い替えを検討する。スマートフォンの買い替えがどうしても必要になってから、新しいモデルを買おうと思う」と言う。

 北京のテクノロジー企業でマネージャーを務めるビビアン・ヤング氏も、高過ぎるスマホの価格に戸惑いを隠せない。「誰もそんな高いスマホを欲しがらないわよ」

 IDCのアナリストであるラモーン・ラマズ氏は、「現在、スマートフォン需要のサイクルは底を打っている状況であり、人々が今日使用しているスマートフォンのバッテリーが耐用期限を迎える、2021年もしくは2022年に需要は再び増加に転じるだろう」と語る。「人々はこの先もスマートフォンを買い替えるだろう。遅かれ早かれ、いずれ買い替えは起きる」

 しかし、業界が成熟していなかった昔にみられたような、高いレベルの成長に直結する「起爆剤」は登場していない。

 財布のように二つ折りにできる「折りたたみ式のスマートフォン」は、画面の大きさを飛躍的に高めることにつながるため、次の大きなブームを巻き起こすかもしれないと目されている。しかし、高価である上、少なくとも今年の末までは発売を待つ必要がある。

 他にもスマートフォン市場を元気にしそうな明るい材料はある。通信会社がインフラ整備を進めている次世代モバイル通信技術、5Gだ。5Gによって、現在普及している4Gよりも高速で安定した通信が実現できる。5Gと互換性を持つスマートフォンは、今年中に市場に投入される予定だ。

「販売に陰りの見えるスマートフォンに活路を見いだす切り札として、5Gには大きな期待とプレッシャーがかかっている。5G対応のスマートフォン販売競争は、おそらく非常に熾烈なものになるだろう」とアイブス氏は語る。

 しかし、5Gネットワークが全国規模で普及するには数年を要するため、今年発売される5G対応のスマートフォンも、青息吐息のスマートフォン市場にとって即効性のある特効薬にはならないかもしれない。

 アナリストたちは、スマートフォンのメーカー各社はアフリカなど市場がまだ飽和していない地域へ進出し、クラウドストレージ、ストリーミング音楽配信、およびスマートフォンのアプリの充実などのサービス提供に注力すべきだと語る。しかし、天井知らずの急成長を続けたあの輝かしい日々はすでに過去のものであるといえよう。

 ラマズ氏は、「市場の成長は徐々に鈍化するだろう。決してスマートフォン市場が終焉を迎えたわけではない。しかし、この状況は、スマートフォン市場が自ら築き上げた成功ゆえに苦境に立たされていることを如実に物語っているのだ」と結んでいる。

By MAE ANDERSON, AP Technology Writer
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Text by AP