アメリカの「強制歳出削減」、懸念される事態とは?
オバマ米大統領は1日、政府支出を10年間で計1兆2000億ドル(約110兆円)強制的に削減する大統領令に署名した。これは、2012年の財政管理法で、議会が新しい赤字削減措置に合意できなかった場合に自動的に始まるとされていた措置。
海外紙は、本件がアメリカの政治・経済に与える影響について論じている。
【なぜ強制歳出削減は発動したのか】
巨額の財政赤字の削減を目的とする「強制歳出削減」だが、景気への影響が大きいことから、大統領・下院第一党の共和党は回避に向けた協議を重ねていた。しかし、富裕層への課税強化と歳出削減の組み合わせを主張する大統領側に対し、共和党側は、給付金制度の改正などに踏み込まず歳出削減に真剣でないと大統領側を批判し、合意には至らなかった。
【懸念される事態とは?】
フィナンシャル・タイムズ紙は、様々な面で国民生活へのダメージが懸念されると報じた。今回のような「緊急発動」は、事前に準備していない人や組織も含めて、一律に強制力を持つという点で、上手に運用しないと混乱をもたらす危険なものであると指摘している。大統領自身も同様の懸念を抱いており、「無用な混乱が起きないように、代替案を早急に出して発動を解除したい」とコメントしている。
こうした状況を踏まえ、ブログサイト「デイリービースト」は、スティーブン・スピルバーグ監督の映画「リンカーン」に関連させ、今回の発動によってアメリカ国内に内戦や暴動が起こるのではと警戒している。
またヘーゲル国防長官は「最も懸念しているのは歳出削減によって軍の即応能力に影響が出ることだ」と述べ、歳出強制削減が長引けば、アメリカの国防政策に深刻な影響が出ることになると示唆した。
さらに、国内での混乱が長引けば、世界経済の波乱要因にもなる可能性があると言及し、解決に向け迅速な対応策が必要だと同サイトは主張している。
【オバマ大統領は平静に振る舞う】
一方ニューヨーク・タイムズ紙は、大統領は9日のジャーナリストらとの夕食会で、これをジョークのネタにしたと報じている。白いえんび服を着用したオバマ大統領は、「強制削減のせいでえんび服のしっぽを切られた」と発言し笑いを誘ったという。他にも、バイデン副大統領(70)に対し「彼の年齢が問題だ。しかしローマ法王になるにはまだ若すぎる」と、“将来の大統領候補”バイデン氏もジョークのネタにしてしまったという。
ただし専門家たちは、“大統領は穏やかに話しているように見えても、内面は全く逆の状態のはずだ”と口を揃えていると、同紙は指摘した。