「移民は5年、二大都市に住めないように」人口過密で豪州、居住制限を検討
オーストラリアでの新生活を、シドニー・オペラハウスやボンダイビーチの景色を楽しみながら始めることはできないかもしれない。オーストラリア政府は、一部の移民が大都市に住み着くことを禁止することを検討している。
都市と都市インフラ及び人口に関する大臣を務めるアラン・タッジ氏によると、政府はシドニーとメルボルンというオーストラリアの二大都市の渋滞を解消することを目指し、2つの都市に流入する移民の数を減らしたいと考えている。
タッジ氏は、ビザに条件を付け加えて、移民が数年間、二大都市より人気の落ちる都市に住むよう義務付けることによって、移民がそれらの地域に定住する可能性が高まると話した。
「ほぼ全てのビザには条件が付加されているので、特定のビザに地理的な追加条件を付け加えることはおかしなことではない」とタッジ氏はオーストラリア放送協会の放送で述べた。
オーストラリアは世界で最も人口密度の低い国のひとつだが、人口(現在約2500万人)の高い割合が都市部に住んでいる。オーストラリア人のうちおよそ5人に2人が、シドニーとメルボルンのたった2都市に住んでいる。
移民が移住してきてから5年の間、シドニーとメルボルンに住むことを禁止することを政府が検討しているとオーストラリアの新聞が報じた。
タッジ氏は、移民が住むべき地域から離れた場合にどのように処罰の対象となるのか、国外退去となる可能性があるのかについては明かそうとしなかった。タッジ氏によると、「現状では、まだ具体的な細部にわたって全て立案していない」とのことだ。
オーストラリアは、経済協力開発機構(OECD)に加盟している先進国の中でカナダを除き人口が最も急速に増加しており、増加率は年間1.6%の割合だ。しかし、メルボルンの人口は昨年2.7%増加し、クイーンズランド州の南東部にあるブリスベン周辺の人口は2.3%、シドニーの人口は2.1%増加した。
シドニーとメルボルンの人口増加の主な要因は外国からの移民だ。技術移住ビザを持つ移民の87%と、ほぼ全ての難民がこれらの2都市に引き寄せられている。ブリスベン・ゴールドコースト地域の人口増加は、オーストラリア国内の移動と高い出生率を反映していた。
タッジ氏は、いくつかのカテゴリーに属する移民は地理的な制限の例外になると述べた。雇用主をスポンサーとするビザで来ている移民は、企業が必要としている地域で働くことができるだろう。また家族ビザを持つ人、典型的なのはオーストラリア人と結婚している外国人だが、彼らも住む場所を自由に選べるだろう。スポンサービザによる就労者はオーストラリアへの移民の25%を占め、家族ビザを持つ移民の割合は30%を占める。
メルボルンに拠点を持つシンクタンクであるグラッタン・インスティテュートに勤める、都市と交通の専門家のマリオン・テリル氏によると、政府は人口増加を抑えるより、むしろ主要都市のインフラを改善すべきだという。
「人々はどこに住むかによって自分の意思を表しています。彼らは都市に住みたいのですから、政府のすべきことは彼らを望まない場所に行かせることではなく、都市が機能し、人がそこに住み続けられるよう保証することです」とテリル氏は話した。
移民の支援者で、シドニーに拠点を持つコミュニティ・マイグラント・リソース・センターの責任者を務めるメリッサ・モンテロ氏は、移民は社会的なサポート、言語面のサポート、落ち着いて新生活を始めるための仕事を必要としていると話した。
キャンベラにあるオーストラリア移民評議会の責任者であり、移民の援護者もしているカーラ・ウィルシャー氏は、政府がサービスに投資し、シドニーとメルボルン以外のより小さい街を移民にとってより魅力的にするべきだと提言した。
ニュー・サウス・ウェールズ労働評議会の書記官を務めるマーク・モリー氏は、同評議会を代表し、政府の計画は移民が大都市で期待していたよりも仕事の選択肢が狭くなり、低い賃金を強いられることで移民を孤立させると話した。
By ROD McGUIRK, Associated Press
Translated by Y.Ishida