「安倍首相演説」 はっきり分かれる日本紙の評価とは?
安倍首相は28日、衆参両院の本会議で施政方針演説を行った。演説は約40分間で、原稿にして1万字に及ぶものとなった。首相は冒頭、「一身独立して一国独立する」という福澤諭吉の言葉を引用し、一人ひとりが「自立」して前進するよう訴えた。演説の章立ては以下の通り。
【被災者の皆さんの強い自立心と復興の加速化】
【経済成長を成し遂げる意志と勇気】
【世界一安全・安心な国】
【暮らしの不安に一つ一つ対応する政治】
【原則に基づく外交・安全保障】
【今、そこにある危機】
日本各紙(朝日・読売・産経)は、経済、外交・安全保障、原発・エネルギーの3分野について主に着目し、施政方針演説を論評した。
朝日新聞は「方針は良いが、実際には課題山積み」と批判的な論調。産経新聞は「安倍カラー」のにじむ内容を評価。読売新聞も内容を評価し、首相が最後に呼びかけた与野党の建設的な議論と合意形成を求める姿勢。
【外交・安全保障】
これについては演説で最も多く語られ、各紙の論評も多い部分だ。
首相は、日米同盟を基軸に、「戦略的な外交」「普遍的価値を重視する外交」、そして国益を守る「主張する外交」を基本とする、と明言した。そのうえで、北朝鮮の拉致問題、核・ミサイル実験問題、尖閣諸島への中国の挑発、ロシアとの北方領土問題などを挙げ、課題解決に向けて取り組むと述べた。特に、領土・領海・領空を“断固として守りぬく”決意を述べ、防衛関係費の増加や「国家安全保障会議」設置を検討すると明言した。
これに対して産経新聞は、“「安倍カラー」をにじませた”、と評価。特に対中抑止の重要性を説いた。また産経・読売両紙は、集団的自衛権の行使についても検討を進めるよう求めている。なお首相はこれについて演説では触れていない。
朝日新聞は特に日米同盟強化の方針について、県民の反対の強い普天間移設問題を解決できるのか、疑問を呈した。
【経済】
首相は改めて「三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)」の推進を訴えた。さらにTPPについては、政府の責任で交渉参加について判断するとした。外交力を駆使し、ルールを「つくる」国になること、国益にかなう経済連携を進めると断言した。
これに対して読売新聞は、TPP交渉に参加しルール作りに関与するには時間が限られていることを指摘し、“速やかに参加の手続きを進めて、国益を確保すべき”と主張した。産経新聞も、TPP交渉参加について評価し、「三本の矢」で最も重要な成長戦略の構築に向け、海外の成長を日本の成長に取り込むよう訴えている。
【原発・エネルギー】
首相は、“安全が確認された原発は再稼働します”と明言した。
これについて読売・産経両紙は、評価しつつも、実際には再稼働に向けた取り組みが“遅れている”(産経新聞)と指摘し、安定的な電力供給のため、再稼働を速やかに進めるよう求めた。
対して朝日新聞は、「できる限り原発依存度を低減させる」という首相の発言に注目し、代替エネルギー確保や廃炉などをどうするのか、先送りせずにビジョンを示すべきという姿勢だ。
なお教育、社会保障などについては、各紙社説ではあまりふれられていない。