メラニア夫人がアフリカ歴訪 大統領の「肥溜め」発言のフォローも

AP Photo / Carolyn Kaster

 トランプ大統領のファーストレディー、メラニア夫人は、初めて単独での長期海外歴訪を行う。今回の歴訪の狙いは、5日間かけて4ヶ国の訪問を対象とし、広大で貧しい大陸の隅々まで訪ね、子供たちが健康で安心して暮らせる環境づくりだ。

 メラニア夫人は10月1日に出発し、アフリカ西部の最初の訪問国であるガーナへ10月2日に到着した。その後、南部のマラウイ、東部のケニヤ、そして北東部のエジプトへと向かう。

 メラニア夫人にとっては、夫から離れ、単独で世界のステージに立つ初の長期アフリカ歴訪となるが、トランプ大統領が無神経で下品な言葉を使ってアフリカの国々を形容したことにより、様々な波紋を呼ぶ可能性がある。

 今回の歴訪は、そのようなトランプ大統領の舌禍で傷ついた各国との関係修復の役目も背負っている。

 戦略国際問題研究所でアフリカプログラムの責任者を務めるジャッド・デバーモント氏は「夫人は今回の歴訪で少々深刻な責務を背負うことになった。これは本来ファーストレディーによる歴訪が担うべきものではないため、いくばくかの不公平感がある」と語る。ファーストレディーは通常、招待国の学校や病院を訪ねたり、または芸術プログラムに参加したりするなどよりソフトな外交を担うことが多く、論点の多い難題への関与を避ける。

 ヘリテージ財団の上級アフリカ政策アナリストであるジョシュア・メサーベイ氏は、トランプ大統領が何人かのアフリカ各国の首脳と交わした「前向きな約束」を引き合いに出して反論した。それらアフリカ各国の首脳には、8月下旬にホワイトハウスでトランプ大統領と面談したケニヤのウフル・ケニヤッタ大統領が含まれる。先週、トランプ大統領はニューヨークでエジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領とも会談を行った。

 また、メサーベイ氏は、アメリカは世界で最も貧しい国の1つであるマラウイの公衆衛生や開発に率先して取り組み、かなりの金額を投じていると述べた。

 メサーベイ氏は、「私は、アメリカとアフリカの関係はトランプ大統領が発した不適切なコメントよりもはるかに大きくて強く、この先何十年間も続いていくものだと思う」と語り、「率直に言うと、平均的なアフリカの人々の多くは今回の騒動の事を知らないのではないかと考えている。そういった危惧は、いかにもエリートの抱きがちな先入観だ」と述べた。

 さらにメサーベイ氏は、「一般的に言うと、アフリカの人々はとても丁重で親切だ。訪問者のために赤いカーペットを敷き、最善のおもてなしを尽くそうとする」と言う。

 ファーストレディーがアメリカ政府専用機に搭乗し、大西洋の横断飛行に出発する数日前、トランプ大統領は国連で自身と妻のメラニア夫人は「アフリカを愛している」と宣言した。

 メラニア夫人の関心事が子供たちの幸福であるため、5日間のアフリカ大陸各国の歴訪では病院、学校、そして保護施設などへの訪問を取り混ぜて日程が組まれている。

 自身も12歳の息子の母であることから、児童福祉がメラニア夫人にとって最も重要な課題だ。夫人は「Be Best」と名付けて今年から開始したキャンペーンを通じ、アメリカで児童福祉の問題に取り組んでいる。今回のメラニア夫人の長期歴訪は、この児童福祉プログラムとその目標の推進を海外で行う初の取り組みとなり、夫人が7月にトランプ大統領と訪れたロンドンで行ったイベントとは別のものだ。

 スロベニア出身の元ファッションモデルであり、アメリカ国民に帰化した48歳のメラニア夫人は、トランプ大統領に同行してこれまでにサウジアラビア、イスラエル、イタリア、ベルギー、フランス、日本、韓国、そしてイギリスなど多くの国々を訪れた。夫人は、7月に開催されたロシアのプーチン大統領との首脳会談の際には、大統領に同行してフィンランドを訪れたが、6月にシンガポールで行われた北朝鮮の金正恩国務委員長との米朝首脳会談には同行しなかった。

 その他、メラニア夫人の国際的な外遊は短期的なものだった。2017年7月には、イギリスのハリー王子が招いた軍の運動競技会に参加するため、日帰りでトロントを訪れた。

 息子がニューヨークの学校に通っているため、トランプ大統領がホワイトハウスで執務を始めてから6ヶ月以上経過した後、ようやく夫人も完全に引っ越しをすることができた。メラニア夫人は、ファーストレディーでいることに気乗りがしていないとみられることもしばしばだが、夫人はこれまで、前任のファーストレディーたちに比べて控えめな姿勢を維持してきた。また、5月に腎臓の手術を受け、数週間職務を離れていた。

 ヒラリー・クリントン氏、ローラ・ブッシュ氏、およびミシェル・オバマ氏らファーストレディーの前任者たちはみな、大統領を伴わずに政権の任期中に何度も海外を訪問した。ファーストレディーはこのような訪問を行うべきだと人々は期待しており、同様の諸外国への訪問は、世界中で最も世間の耳目を集める役目をメラニア夫人がうまくこなせるかどうかの試金石として捉えられている。

 元ファーストレディーのクリントン氏、ブッシュ氏、そしてオバマ氏は、何度も繰り返し単独でアフリカを訪問した。

 ニュージャージー州のライダー大学でファーストレディーの研究に従事するマイラ・グティン氏は、「ファーストレディーが国旗を掲げて外国を訪れる場合、アメリカに対する好印象を生み出すためにできることがたくさんある。私はメラニア夫人ならきっと期待に応えてくれると思う」と語った。

 今年初旬、トランプ大統領がアフリカ大陸の国々に対して個人的に抱く不満を「肥溜めのような国々」という言葉を使ったことが報道記者に知れ渡り、アフリカ中に深い憤りを生じさせた。

 AP通信は今年1月、トランプ大統領は後に公の場でこの発言を部分的に否定したが、個人としては自身の発言を擁護したと報じた。さらに4月、トランプ大統領は、ナイジェリアのムハンマド・ブハリ大統領をホワイトハウスで歓待した時にこの件について問われたが、自分の発言を否定しなかった。

 また、トランプ大統領は、南アフリカは農民から農場を強奪し、多数の農民が殺害されているという自らの主張をツイッターに投稿して南アフリカの人々を怒らせた。大統領は南アフリカが直面している土地問題に関するFOXニュースを観た後でツイッターの「送信」をタップした。農民の殺害は20年以上にわたって行われており、南アフリカの極めて高い犯罪発生率の一部を構成しているとして広く認識されているが、有識者たちによると、白人の農民たちは標的にされない上、何人も殺されるような兆候は全くないということだ。

By DARLENE SUPERVILLE, Associated Press
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Text by AP