ブルガリア内閣総辞職 首相の思惑は?
ブルガリアのボリソフ首相は20日、内閣総辞職の意向を表明した。首都ソフィアで、電気料金の急騰に抗議するデモ隊が警官隊と衝突する事態にまで発展したことを受けての発言とみられる。ブルガリアは再生可能エネルギーの普及に力を入れているが、そのコストを電気料金に上乗せしたため、国民の反発につながったという。
海外各紙は、背景にあるブルガリアの経済情勢などを報じている。
【ブルガリアの経済状況】
ニューヨーク・タイムズ紙によると、ブルガリアの財政は比較的健全で、同じ東欧のハンガリーやルーマニアのように国際的な財政支援を受けるには至ってないという。しかし、失業者の増加、経済の低成長、賃金と年金の引き上げの凍結、増税などにより、主に中産階級は「緊縮財政で搾取されている」と不満を募らせてきたようだ。
そのためボリソフ首相の辞任は、欧州経済危機による新たな政治的犠牲者という見方もあると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。フィナンシャル・タイムズ紙も、ブルガリアが、緊縮財政への反発によって政権が倒された最新の国になったと報じている。
【ポピュリスト政治家への警戒とボリソフ首相】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同国のシンクタンクの見方として、代替となる政権がないことが、現在最も懸念されるとしている。すなわち、総選挙後に安定した政権を築けるだけの勢力が存在しない群雄割拠の状態で、ポピュリスト政党が力を強めることによって、国政に危機的な状況が訪れるのではないかと案じているのだ。
一方ニューヨーク・タイムズ紙は、当のボリソフ首相自身こそが典型的なポピュリストであるという政治アナリストの意見を紹介している。それによると、ボリソフ氏は貧困層に取り入るようにして政権を奪取したが、大衆は自分たちがだまされていたと悟るに至ったという。実際、同首相はこれまで、国民の要望に応える形で、電気料金値下げ等を約束していた。しかしフィナンシャル・タイムズ紙によれば、料金値下げについて、首相の口約束以外何ら動きはないという。
また同紙は、首相が辞任したのは、自身が結党し所属する「ヨーロッパ発展のためのブルガリア市民」党の支持率向上を目論み、ギャンブルに打って出たためであるという見方を紹介している。