ベネズエラ大統領帰国、祝祭後の現実はいかに?

 ベネズエラのチャベス大統領は18日、がん手術のため渡っていたキューバから突然帰国した。不在であった2ヶ月間、その様子が報道されることはなく、大統領の安否が心配されていた。ただ15日には、2人の娘に囲まれてベッドに横たわり笑顔を見せる写真が公開されていた。同氏のツイッターアカウント(フォロワー約400万人)は昨年11月以来投稿がなかったが、18日には帰国の喜びを語り、支持者を歓喜で沸かせた。ただし体調は未だ回復していないようで、人工呼吸器を使用しており、話すことが困難という。今後は国内で治療に励む予定だと報じられている。
 海外各紙は、大統領帰国で国内の問題解決に期待を寄せる人々の様子や、懐疑的な反対派などの意見を報じている。

 空港から軍の病院に直接搬送されたチャベス大統領の帰国を祝う支持者が、施設に集まったり花火を打ち上げるなどして喜んでいると、各紙は報じている。体調は万全ではないようだが、「国の危機に大統領の不在は好ましくない」とするキューバのアドバイザーらの助言を受けて帰国に踏み切ったのだろうとの見方もあるようだ。

 なおチャベス大統領は、不在の間も重要会議には参加しており、大きな政治的決断を下してきたとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。話すことは困難とはいえ、筆談での会話は可能だったということだ。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同氏の動向として、今月の通貨切り下げを取り上げた。これまでの任期中に膨れ上がった財政赤字を回復させるために、ボリバル・フエルテを1ドル=6.3ボリバルと32%切り下げ、原油輸出からのボリバル建て歳入の拡大を狙ったが、結果としては輸入に頼っているベネズエラでは物価の上昇へとつながってしまったと報じられている。

 チャベス氏が大統領の職務を継続するか否かは不明だが、辞任となった場合に備えて、後継人に指名されたマドゥーロ副大統領も選挙を意識した活動を展開しているとフィナンシャル・タイムズ紙は分析している。最近も、通貨引き下げによる反動や反対派らを抑える動きをとっているという。支持者の中には、チャベス氏が非公式の式典で就任宣誓をした上で、マドゥーロ氏への権限委譲に向けた障害を除いていくのでは、と期待する声も挙がっている。

 一方、野党候補エンリケ・カプリレス氏を筆頭とする反対派らは、大統領が大病から回復していないままでは国家を統治できないとの見方を示している。大統領支持者の中にも、後継者とされるマドゥーロ氏に対する不安を抱く者がおり、チャベス大統領不在のまま大統領選が実施されれば、形勢逆転もあるのではとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 なおウォール・ストリート・ジャーナル紙は、医療関係者への取材を通して、チャベス大統領の余命は僅かとも言われており、復帰はおろか回復も困難のようだとしている。

Text by NewSphere 編集部