豪42%「トランプ大統領は脅威」 増大する不信感、米離れ進む恐れ
オーストラリアはアメリカの同盟国として、軍事、経済において常にアメリカとともに歩んできた。ところがトランプ政権発足以来、アメリカを信用できないと考えるオーストラリア人が増えている。アジアの勢力図が書き換わるなか、オーストラリアのアメリカ離れを懸念する声が出ている。
◆米不人気が顕著 トランプ氏自体が脅威
豪シンクタンク、ローウィ研究所の2018年の調査では、「世界において責任ある行動を取る」ことに関し、国別の信頼度を見た場合、アメリカを「非常に、または、やや信頼する」と答えた人は55%となり、昨年から6ポイント、2011年からは28ポイントも低下した。これは調査開始以来最低の数字で、イギリス(90%)、日本(87%)、フランス(84%)、インド(59%)に対する信頼度より低くなっている。
トランプ大統領が国際問題に正しく対処できると「非常に、またはやや自信を持っていえる」とした人は全体の3分の1以下で、中国の習近平主席よりも少なかった。ちなみに1位はイギリスのメイ首相、2位は日本の安倍首相だった。
さらに、42%のオーストラリア人が、トランプ氏が大統領であることは自国にとって深刻な脅威だと回答しており、外国からの政治的干渉、移民問題、中国の台頭など、他の重要課題を上回った。
◆米不信も同盟は重視 トランプ発貿易戦争も不安
ローウィ研究所のマイケル・フリラブ氏は、トランプ政権が、アメリカに対するオーストラリア人の信頼と自信を破壊していることは間違いないと述べている。その一方で、アメリカとの同盟は4分の3が支持すると答えており、トランプ氏のためにアメリカと距離を置くべきと答えたのは31%しかいなかったとも指摘している(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。
オーストラリアの懸念の一つは、トランプ政治が西側の同盟を弱めることだとFTは指摘する。シドニー大学のジェームス・カラン教授は、オーストラリア人にとっては米、豪、ニュージーランドの間に結ばれた太平洋安全保障条約(ANZUS条約)が基盤であるとし、近年中国が南シナ海で強行姿勢を見せたり、オーストラリアの国内政治に干渉したりしていることが、同盟重視の気持ちを高めているのではないかと解説している。
もう一つのトランプ氏への懸念は、中国との貿易戦争に火をつけることだと同紙は述べる。前述の調査では、3人に1人が中国の豪政治への影響を、72%が中国からの投資に懸念を示したが、82%はどちらかといえば中国を軍事的脅威というよりも経済的チャンスと見ている。結局オーストラリア人は、米中両方と良い関係を維持したいというのが本音だろう。
◆トランプ政権継続なら米離れはさらに深刻に
トランプ氏は豪ターンブル首相との初の電話会談を「これまでで最悪」と吐き捨てたが、ターンブル首相は国益のためトランプ氏にお世辞を使い、なんとか関係を維持してきた。しかし先のG7会合でトランプ氏がカナダのトルドー首相を批判し、共同声明を拒否したことから見ても、トランプ氏のお気に入りから同盟国が外れるのはあっという間だとFTは指摘する。
現状トランプ氏に逆らわない姿勢のターンブル政権だが、前出のカラン教授は、この先6年間トランプ政治が続けば、豪国民のアメリカへの信頼はさらに悪化すると見ている。その結果、次の米大統領にとって、同盟システムにおける信頼を再構築することは困難になるだろうと述べている。