厳しさ増す韓国の雇用 若者の失業率は10.5%でワースト更新
日本や欧米を中心に先進各国で失業率が改善するなか、一向に回復を見せない韓国の雇用情勢が世界金融危機の水準まで落ちた。韓国統計庁が発表した雇用動向(5月時点)によれば、新規就業者数は7万2000人で、世界的金融危機の1月以降、最も少なくなった。失業率は0.4ポイント上昇して4.0%、特に若年層(15~29歳)の失業率は1.3ポイント上昇の10.5%で1999年の統計開始以降、最も高くなった。
◆止まらない雇用環境の悪化
同調査によると今年5月の韓国国内の就業者数は2706万人で、世界金融危機以降最小となる前年同月比7.2万人の増加にとどまった。例年30万人台だった就業者の増加幅は、今年2月から4月まで3ヶ月連続で10万人台に落ち込んだ。韓国紙中央日報は、「就業者の増加幅が4ヶ月連続で20万人を下回ったのは、1998年のアジア通貨危機までさかのぼらなければならない」と述べた。
現在、文在寅(ムン・ジェイン)政権は「最低賃金引き上げ」「労働時間短縮」という所得主導の成長政策を掲げている。しかし、産業界や労働者から、副作用として労働者の雇用や労働時間まで減少するのではないかといった批判が寄せられていた。
強い反発を受けた韓国政府は、改正法施行の11日前に突然、「取り締まり・処罰は6ヶ月間猶予する」と発表した。政府与党は「労働時間短縮による衝撃を最小限に抑えるための措置」と説明しているが、韓国社会は雇用悪化の状況をかんがみた事実上の“施行時期延期”と受け止めている。
◆若者の4人に1人が失業状態
さらに深刻なのは、青年失業率だ。実質的な失業状態にある人を含む青年層の体感失業率は23.2%に達して統計開始以降最悪となった。4人に1人仕事がないという状況に対して、中央日報は「主要先進国が活況を呈しながら、韓国の若者だけ前例のない求人難を経験している」と嘆いている。文政権が政策の目玉としてきた最低賃金の引き上げが原因の一端と指摘されている。
◆文政権、経済政策の失敗を認めるか
金東兗(キム・ドンヨン)経済副首相は今回の統計庁の発表を受けたあと緊急対策会議を開き、「私を含め経済チームの重い責任を感じている」と発言した。その上で「少子化の影響で雇用市場に参入する10代後半の人口が減っており、単純な就業者数が過去と比べて増えにくい構造になっている」と弁明した。
確かに若者自体の数も減っているが、先月の失業者数は112万人で1年前と比べて12万人も増えている。大統領府は「最低賃金引き上げによる肯定的効果は90%」と強弁してきたが、急激な賃金上昇で韓国社会が困惑しているのは明らかだ。韓国各紙が指摘しているようにその責任は重いといえる。