アマゾンが警察に提供する顔認識システム「Rekognition」とは? 人権団体が反対
犯罪捜査などで使われているアマゾンの画像・動画認識システム「Rekognition」に対し、プライバシーが侵害されるとの懸念の声が上がっている。警察が顔認識技術を利用した場合、警察官が身に付けているボディカメラなどからリアルタイムで人物を特定・追跡できる社会になる恐れがあると指摘されている。このため、複数の人権団体で構成されるグループが22日、アマゾンに対し、警察などの政府機関にシステムを提供しないよう要請した。
◆アマゾンの顔認識システムの性能は?
顔認識システムは、使用者があらかじめデータベースに入力した画像と一致するものを、分析対象の画像・映像の中から探し出すもの。アマゾンが発表したプレスリリースによれば、Rekognitionは数千万人の顔写真のデータベースの中からリアルタイムで認識を行うことができる。
アマゾン側は用途の1つとして犯罪捜査を想定しており、実際にオレゴン州ワシントン郡の保安官事務所などいくつかの当局が既にRekognitionを採用している。アマゾンは、ワシントン郡保安官事務所がRekognitionを使用した結果、容疑者の身元の特定にかかる時間が2~3日から数分に縮まったとしている。
◆人権団体が懸念する監視社会とは
アメリカ自由人権協会(ACLU)が率いる人権団体のグループは22日、Rekognitionを警察などの政府機関に提供しないよう要請する書簡を発表した。特に、Rekognitionを警察官のボディカメラと組み合わせて使用することに対して懸念を示しており、書簡では、「人々は、政府機関から監視されることなく通りを歩く自由を持たなくてはならない」と指摘している。
この懸念が現実のものとなるような試験プログラムが昨年フロリダ州オーランドで行われていた。オーランド警察は、カメラを利用したリアルタイムでの対象人物の検出を行った(AP通信)。オーランド警察は、市が所有するカメラ8台と自身の画像が利用されることに同意した警察官に限定して行われた試験プログラムであり、監視ツールとして活発に使用しているわけではないと釈明している。
◆顔認識システムも安さで勝負? アマゾンの強み
Rekognitionと同様の顔認識システムは他の企業も販売している。しかし、Rekognitionの価格の安さやアマゾンの企業能力の高さから、導入が広がるのではないかと警戒する声も上がっている。
価格については、Rekognitionを導入したオレゴン州ワシントン郡の場合、検出の対象となるマグショット(逮捕直後の容疑者の写真)30万5000枚をRekognitionのデータベースに読み込ませるのに400ドル(約4万円)を支払い、その後サービスを継続させるのに月額6ドルを払っているだけだという(AP通信)。
ニューヨーク・タイムズ(22日)は、「テクノロジー製品の幅広い採用を効果的に推し進めるアマゾンほどの能力を持った企業はほとんどない」、「アマゾンは顔認識技術を法執行機関に積極的に売り込んでいる最初の大手テクノロジー企業の1つだ」と指摘している。