米中貿易摩擦の転換点に? ZTEへの制裁緩和、トランプ大統領が方針転換
世界一そのツイートが注目されているとも言えるトランプ大統領のツイートが、またしてもその絶大な影響力を発揮した。同大統領が中国スマホメーカーZTEについてツイートした途端、アメリカのハイテク企業の株価が軒並み上昇したのだ。このツイートが招いた事態には、国を超えて相互に依存するハイテク企業の現状、さらには米中関係に関する思惑が関係している。
◆許されたZTE
経済ニュースサイト『マーケットウォッチ』は14日、トランプ大統領が中国のスマホメーカーの中興通訊(ZTE)が業務を再開することについてツイートしたことを報じた。米商務省は先月、同社が経済制裁協定に違反してイランや北朝鮮と商取引しているとして、同社がアメリカ企業からスマホの部品を購入することを禁止すると発表。先週、同社のアメリカでの業務を禁止していた。同大統領は、同社に関して「アメリカからスマホの部品の大部分を買っている」企業であるともツイートして、同社がアメリカにとって重要な取引企業であることを強調した。
アメリカ株式市場は、同大統領の一連のツイートにすぐさま反応した。ZTEへの部品販売によって昨年の収益の30%をあげていた光学部品メーカーのアカシア・コミュニケーションズでは、大統領のツイート後に株価が8.7%上昇した。また、ZTEのスマホにチップを供給している半導体メーカーのクアルコムは3.2%株価が上昇した。
◆相互依存するハイテク企業
NBCニュースは15日、株価変動の遠因ともなったZTEにペナルティを課したことを批判する記事を掲載した。記事では、調査会社フォレスター・リサーチの主席アナリストにしてヴァイス・プレジデントでもあるアンドリュー・バルテル氏が、「テクノロジー産業全体は、世界中の様々な場所からコンポーネントや部品を調達して成り立っている複雑なサプライチェーンにもとづいている」と指摘。それゆえ、今回のZTEへの制裁のように「政治的な理由で」サプライチェーンを混乱させるのは「憂慮すべき兆候」だと同氏は述べる。
また、調査会社フォレスト&サリヴァンのモバイル・無線通信部門ヴァイス・プレジデントのブレント・イアダロラ氏も、ZTEへのペナリティはアメリカの無線製品業界を混乱させたものと断じたうえで、「(半導体を供給する)クアルコムや(スマホのOSを提供する)グーグルのようなアメリカ企業に悪影響を与える」ものだったと批判した。
◆米中関係の転換点?
一方、ビジネスインサイダーは、以上のようなアメリカの利を損ねるZTEへの措置が解除されたことが米中間の経済摩擦における新たな転換点となる可能性がある、と論じた記事を掲載した。同記事は、トランプ大統領のZTEに関するツイートは中国への関税措置の施行を遅らせることを示唆しているかも知れない、と述べている。
さらに、貿易も手がける調査会社コンパス・ポイントの政策アナリストであるイサク・ボルタンスキー氏は「トランプ大統領のZTEに関する政策転換と、中国の副首相のワシントン訪問がきっかけとなってアメリカ通商代表の公聴会が開かれる予定であり、このふたつの出来事は米中の幅広い交渉に不可欠な基盤とタイミングがまだあるというわれわれの信念を強固にしている」と語った。