米音楽界に異変、ライブ中止続出 ファンは「青い点現象」に注目
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ここ数週間、アメリカで大物アーティストたちが大規模なライブやツアー全体をキャンセルしている。背景にはチケットの売れ行き不振があるとみられており、この現象はファンの間で「ブルードット・フィーバー」と呼ばれている。
◆広がる青い点 販売低迷をビジュアル化
「ブルードット・フィーバー」は、アメリカに本社を置く世界最大級のチケット販売サービス「チケットマスター」のウェブサイトの座席表に由来している。通常、空席はブルードット(青い点)で示されており、青い点が目立つということは、販売が低迷していることを表す。フィーバー(熱)という表現は、今年になってこの現象が著名なアーティストの公演で急速に広がっている状況を例えたものだとされる。
この言葉はネット上の冗談から生まれたもので、チケット販売業者が使用する公式な用語ではない。あくまでもチケットの売れ行き不振やイベント中止という継続的な現象を説明するため、ファンが用いている非公式な簡易表現だという。(テネシー州の日刊紙テネシアン)
◆高すぎて手が出ない… 関連費用も負担に
ライブエンターテインメントへの需要は、パンデミック後に急増。音楽興行業界紙ポールスターのシニアライター、JR・リンド氏によれば、2021年と2022年は需要がたまりにたまっており、ツアーを行えば莫大な利益が上がるという状況だった(英タイムズ紙)。その後も順調にツアー数、チケット販売数はパンデミック前の水準を上回り、「ライブの黄金時代」が到来した。
ポールスターとエンタメ業界ニュースサイト『ザ・ラップ』が実施した調査では、平均チケット価格は2020年には82.15ドルだったが、その後大幅に上昇。2025年には119.65ドルとなった。さらに、音楽業界統計サイト『AMW』によれば、2026年に入ってからは144ドルまで上昇している。
しかし、経済的・地政学的な不確実性が高まる中、チケット価格の上昇に対する消費者の許容度が限界に達したとタイムズ紙は指摘し、これが売れ行き不振の主要因だと述べている。さらに、入場料だけでなく交通費、宿泊費、グッズ代もコンサートにかかる費用を大幅に押し上げており、ファンの負担になっているとした。
◆ファンがアーティストを吟味 安泰は超大物のみ?
もっとも、チケット代は高くても、テイラー・スウィフトやビヨンセのような超大物アーティストの公演なら、人々は貯金をはたいて買うと音楽業界ニュースサイト『デジタル・ミュージック・ニュース』は説明。ファンは依然としてコンサートに足を運ぶが、チケット代の高騰で以前のように気軽に複数公演へ足を運ぶことはなくなり、取捨選択に厳しくなっていると述べている。
その結果、トップアーティストに次ぐ層のアーティストにプレッシャーがかかるとタイムズ紙は指摘する。これまでにポスト・マローン、メーガン・トレイナー、ゼイン・マリク、プッシーキャット・ドールズといった人気アーティストたちがツアーをキャンセルしている。売れ行き不振を示唆したのはプッシーキャット・ドールズだけだが、ファンたちの多くが「ブルードット・フィーバー」の事例だとみている。
タイムズ紙によれば、ニューヨーク大学の音楽ビジネス非常勤教授、クレイトン・デュラント氏は、現代のツアーは都市から都市へトラック隊を走らせ、会場に機材を運ぶという大規模なロジスティクスが必要だと指摘する。採算が取れそうに見えたツアーでも、コストの上昇で赤字になる可能性があり、こちらもツアーキャンセルに影響を与えているとみられる。同氏はまた、中東情勢の緊迫化による燃料費高騰が、アーティストとそのチームの財政状況に大きく影響するだろうとしている。




