中国レーダー照射事件 日本紙が分析する日中両政府の思惑
中国軍艦が、海上自衛隊の護衛艦やヘリコプターに射撃用の火器管制レーダーを照射した事件について、中国外務省の華春瑩・副報道局長は6日の記者会見で、「われわれも報道で知った。具体的な状況は承知しておらず、(別の)関連部署に聞いてほしい」と述べた。
6日の中国紙は、日本メディアの報道を引用する形で本件を報じるにとどまっていたが、7日朝の中国国営テレビは、「中国艦船のレーダーが日本艦船をロックオンしたことを日本が誇張」というタイトルの特集を放送したという。さらに党機関紙の国際版である環球時報は、「日本側の自作自演だ」と主張している。朝日新聞によると、“日本政府が詳しい両国艦船の航行状況を公表しなかったことを理由に挙げ、日本の艦船の行動にも問題があった”との見方を示したという。
「拳銃を向ける」に等しい今回の挑発行為を、各紙はその後どのように報じているのか。
まず、中国の狙いや事件の背景をどう分析したのか。
朝日新聞は、レーダー照射について明確な回答を避ける中国政府の姿勢について、今回の措置を喧伝すると、対日世論のさらなる強硬化や国際的な批判の高まりを招くと懸念したのだと予測している。実際すでに、中国艦隊が日米の艦船や哨戒機などに追尾されることに対して、世論にはいらだちがあると指摘した。こうした現状を踏まえ、今後の中国政府は、国内世論のコントロールと、軍事的な圧力の継続を並行すると分析した。
読売新聞は、現地メディアの報道や軍事専門家の「つぶやき」を基に、中国の行動は圧力をかけてきた日本への警告だ、と責任を転嫁する論調だと報じた。今回の挑発行為の指示経路は明確で無いものの、習近平指導部が“現場の危険行為も事実上、容認している”と分析している。
産経新聞は背景として、中国軍の戦闘機が尖閣諸島周辺など東シナ海上空で、航空自衛隊の戦闘機と「接近戦」を常態化させていると1面で報じた。
一触即発の事態を防ぐための、日本政府などの対応についてはどう報じたか。
まず読売新聞は、日本が中国に防衛当局間の「ホットライン」を整備するよう求める方針であると、1面で報じた。もともと両政府は、2011年7月の防衛次官級協議で、緊急連絡体制を早期に構築することで一致していたが、9月の尖閣諸島国有化をきっかけに中断していた。これについてはアメリカも構築を促す意向だと同紙は報じている。背景として、2001年、南シナ海上空で米軍電子偵察機と中国軍戦闘機が接触し緊張関係がにわかに高まった経験から、2008年に両国軍首脳のホットラインを設置したことを紹介した。
朝日新聞も、日本が「海上連絡メカニズム」、すなわちホットラインの整備に言及したことを報じた。もともと安倍首相が2007年に温家宝首相との会談で協議開始に合意した経緯があると紹介した。そのねらいについては、現場の暴発を政府間で防ぐという立場の明確化だと分析した。挑発行為自体、砲身が向いておらず攻撃の可能性は低かったこと、中国政府が軍を統率できていないという懸念が払拭できないことなどが背景にあると報じた。