分析:イラン戦争は「どちらが痛みに耐えられるか」の競争

空爆を受け、煙が立ち上るイランの首都テヘラン(3月2日)|Mohsen Ganji / AP Photo

 イランとの戦争は、その複雑さや世界的な影響にもかかわらず、結局は一つの問いに行き着く。すなわち、「どちらがより長く痛みに耐えられるか」だ。

 原油価格の急騰は、この戦争でイランが持つ最も効果的な武器と、アメリカ側の最大の弱点を浮き彫りにしている。それは世界経済への打撃だ。ガソリン価格の急上昇は消費者や金融市場を動揺させ、国際的な旅行や物流も深刻な混乱に陥っている。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領も、この危険性を認識しているようだ。原油価格は9日、1バレル120ドル近くまで跳ね上がり、2022年以来の高値をつけた。トランプ氏はこの戦争が「短期間」で終わる可能性を示唆し、市場の不安を和らげた。その後、価格は90ドル前後まで下落した。もっともトランプ氏はほぼ同時に、戦争を継続しイランへの圧力を続けるとも誓っている。

 その一方で、イランはアメリカとイスラエルによるほぼ絶え間なく続く空爆に耐えなければならない。これまでのところ、イスラム共和国の統治体制は維持されており、開戦初期の攻撃で殺害された最高指導者から、その息子へと指導権が引き継がれた。軍は大きな打撃を受けているが、依然として地域各地にミサイルやドローンを発射し続けている。

 1月には全国的な抗議デモで神権政治に反旗を翻したイラン国民だが、今も怒りはくすぶっている。ただ、激しい爆撃の中で生き延びるため、多くは自宅にとどまっている。治安部隊は反政府デモの発生を防ぐため、連日街頭を監視している。

 圧力はアメリカの同盟国にも及んでいる。湾岸アラブ諸国は直接の参戦こそしていないが、油田や都市、重要な水インフラを狙ったイランの攻撃にさらされている。攻撃は終わりが見えず、死者が出ることもある。イスラエルは、イランのミサイル計画などに大きな打撃を与えたと主張しているが、依然として高度なイラン製ミサイルの攻撃を受けている。都市には散弾のように高性能爆薬がばらまかれ、空襲警報も頻発している。学校や職場は閉鎖され、地域全体が緊張した空気に包まれている。

◆戦闘に「出口」は見えず
 戦争終結の兆しは見えない。アメリカとイラン双方の発言にも妥協の気配はなく、両国の対立は1979年のイラン革命やアメリカ大使館人質事件までさかのぼる。

 トランプ氏は9日、フロリダ州ドーラルでの演説で「我々は多くの面ですでに勝利しているが、まだ十分ではない。我々は、この長年の脅威を完全に終わらせる最終的な勝利を目指し、これまで以上の決意で前進する」と述べた。

 イランのカゼム・ガリババディ外務次官も、テヘランから鏡合わせのような発言をし、中国、フランス、ロシアなどから停戦交渉の打診があったものの、イランはそれを拒否したと誇示した。ガリババディ氏は9日夜、イラン国営テレビで「現時点では我々が優位に立っている。世界経済やエネルギー市場の状況を見れば分かるはずだ。彼らにとって非常に痛手となっている」と語った。そして、戦争の終結を決めるのはイランだと付け加えた。

◆イランの戦略は「混乱」の拡大
 イランは、アメリカとイスラエルが2月28日に戦争を始める前から、もし攻撃を受ければ、中東全域に報復し、湾岸アラブ諸国を巨万の富で潤してきた石油インフラを標的にする、と警告していた。対照的に、イラン経済は国際制裁によって長年にわたり大きな打撃を受けてきた。

 イランは今、ミサイルとドローンの集中攻撃によってその脅しを現実のものにしている。カタールは天然ガス生産の停止を余儀なくされ、バーレーンは石油事業が契約上の義務を履行できないと宣言した。サウジアラムコなど他の産油企業にも影響が及び、アジアへの主要なエネルギー供給が混乱している。特に中国は、この問題に対応するため特使を派遣した。

 戦略的要衝であるホルムズ海峡では、船舶の往来がほぼ停止している。世界で取引される石油と天然ガスの約20%、さらに肥料輸出の最大30%が通過するこの海峡だが、イランは機雷を敷設する必要さえなかった。数隻の船舶が攻撃されたことで、海運会社が航行を停止したためだ。

 トランプ氏はアメリカ軍艦がタンカーを護衛する可能性に言及しているが、航行を再開させる具体的な動きにはまだ至っていない。

 トランプ氏は10日早朝、SNS「トゥルース・ソーシャル」で、イランが海峡の石油輸送を止めれば「アメリカはこれまでの20倍の力で報復する」と警告した。「さらに、国家として再建することが事実上不可能になるような標的を破壊する。死、炎、そして怒りが彼らに降り注ぐだろう。だが、そうならないことを願い祈っている」

 しかしイラン側も強硬姿勢を崩していない。革命防衛隊は10日、ペルシャ湾から「一滴の石油」も出させないと警告した。

◆「勝利」とは何か
 イランの神権体制の指導者にとって、勝利とは、国や地域がどれほどの犠牲を払おうとも政権を維持することを意味する。

 トランプ氏の戦争目的は曖昧で、時に矛盾している。イランの神権体制の打倒を目指しているようにも見えるが、一方で、イスラエルや中東地域、アメリカにとってイランが脅威ではなくなることだけで十分だとも述べている。

 この曖昧さは、アメリカ経済に深刻な影響が出始めた場合でも、「勝利」を宣言して戦争を終わらせる余地を残すものかもしれない。

 しかし、仮に今すぐ戦争が終わったとしても、アメリカとイスラエルには大きな課題が残る。

 一つはイランの指導部だ。開戦当初、86歳の最高指導者アリ・ハメネイ師がイスラエルの空爆で死亡した後、イランの聖職者たちは56歳の息子モジタバ師を後継者として指名し、最高指導者の地位に引き上げた。

 現在イランの最高権力者となったモジタバ・ハメネイ師は、父親以上に強硬派とみられており、準軍事組織である革命防衛隊とも密接な関係を持つと分析されている。イスラエルはすでに同氏を攻撃対象と位置づけており、トランプ氏も別の人物が指導者になることを望んでいると語っている。

 またイランは依然として高濃縮ウランの在庫を保有している。これはアメリカとイスラエルが戦争の理由の一つとして挙げてきた問題だ。イランは純度60%まで濃縮を進めており、兵器級とされる90%までは技術的にわずかな段階しか残っていない。

 アメリカは昨年6月、イスラエルとイランの12日間戦争のさなか、イランの核施設3カ所を爆撃した。その結果、在庫の多くは瓦礫の下に埋まった可能性が高いとみられている。これらの施設はいまも国際査察の手が届かない状態だ。

 モジタバ・ハメネイ師が宗教令(ファトワ)を出し、父親が過去に示していた方針を覆して核兵器開発を命じる可能性もある。それはアメリカや、長年中東唯一の核保有国とみられてきたイスラエルにとって、最も望ましくないシナリオだ。

By JON GAMBRELL Associated Press

Text by AP