海外メディアは衆院選をどう見た 「圧勝」の意味づけ、評価は割れる
Eugene Hoshiko / AP Photo
高市早苗首相率いる自民党が衆院選で圧勝し、衆院の3分の2を超える議席を確保したことについて、海外主要メディアは一斉に「地滑り的勝利」と報じた。ただし、その意味づけは一様ではない。歓迎、警戒、冷静な分析が交錯し、日本政治の転換点として多角的に捉えられている。
アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、今回の選挙結果を高市政権に対する「明確な白紙委任」と位置づけた。解散は大きな賭けだったが、結果的に首相の正当性を強く裏付けたと評価する。一方で、対中関係の緊張や財政制約など「国内ではなく国外に残る制約」にも言及し、日本の政治的安定がそのまま将来の安定を保証するわけではないとの距離感も保った。
イギリスの公共放送BBCは比較的説明的なトーンで、有権者の声や投票の背景に焦点を当てた。初の女性首相による大胆な解散と勝利を事実として伝えつつ、物価高や財政への不安を抱えながらも「強い日本」を掲げるメッセージが支持を集めた点を整理している。圧勝の評価は共有しながらも、勝利の熱狂を抑制的に描く姿勢が目立った。
イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズは、市場と財政への影響を主軸に据えた。選挙結果を受けて株価が上昇する一方、巨額の財政出動や減税公約が国債市場や円相場に与えるリスクを指摘する。政治的な強さが増すほど、財政運営の難度も高まるとし、「投資家にとって再評価を迫られる日本」という見方を示した。
アメリカのワシントン・ポスト紙は社説で、今回の圧勝を「アメリカにとって朗報」と位置づけた。対中強硬姿勢や防衛力強化を歓迎し、日本がアメリカの同盟国としてより積極的な役割を担うことに期待を寄せる。高市政権の路線を国益の観点から明確に評価する姿勢は、分析にとどまる他紙とは一線を画す。
これに対し、イギリスのガーディアン紙は警戒感をにじませた。圧勝によって権力が集中することへの懸念や、財政悪化、対中摩擦の激化といった「代償」を強調する。支持を得た強硬路線が長期的に持続可能かどうか、疑問を投げかける論調だ。
アジアの当事者視点を示したのが韓国紙・朝鮮日報である。国民の約8割が保守政党に投票した点を強調し、高市首相を「最強の権力を手にした指導者」と位置づけた上で、日本が安倍政権期を超えて右へ進む可能性に強い警戒感を示した。憲法改正や安保政策の転換を、戦後体制の節目として捉える視線は、欧米メディアとは異なる緊張感を帯びている。
海外報道を総合すると、圧勝そのものへの評価は一致しているが、その先に見据える日本の姿は分かれている。安定と抑止力の強化とみるか、権力集中と摩擦の拡大とみるか。衆院選の結果は、日本国内だけでなく、国際社会においても日本の進路を問い直す材料となっている。




