中国女性の収入、男性より22%少ない 強い野心、社会進出に肯定的な風潮も

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 世界的に問題となっている男女の所得格差。女性の起業が盛んな中国でも女性の収入が男性より22%少ないことが明らかとなった。中国メディアの重慶晨報によると、求人サイトが行った「2018年版 女性の職場の地位に関する報告書」のなかで、女性の平均月収は6589元(約11万円)、男性は8006元(約14万円)と報道された。また、管理職における女性の割合が依然として低いことも指摘された。中国の労働事情について、昨年7月、米メディアは「世界で最も男女の経済格差が少ない国」と評価。しかし今回の最新調査では米メディアの分析とは異なる結果となった。

◆女性が管理職まで昇進しない理由
 中国求人サイトの智聯招聘は31の省・地区を対象に給与に関する調査を実施した。その結果、女性の収入は男性よりも22%低いことがわかった。ただ、一般社員では男性5752元(約9.7万円)、女性5530元(約9.3万円)とその差はほとんどない。ところが、管理職に昇進する男性が増えると格差は大きく広がる。職場の73.8%の社員は「会社役員のほとんどが男性」と回答した。男性が昇進する年齢になっても女性は平社員でいることが多く、その理由について「結婚や出産といったタイミングで昇進の機会を失う」と重慶晨報は述べる。

 男女の家庭における役割の違いでは、女性は男性よりも「家族の世話や家事にかける時間」が15%多く、「仕事にかける時間」は9%少なかった。そのため「仕事を選ぶ基準」では女性の35.9%が「通勤のしやすさ」を第一候補に挙げる。自動的に職業の選択肢を狭めているわけだ。

 米メディア『クオーツ』は昨年7月、中国社会について、高学歴・高所得の女性増加や都市部における女性数の増加を挙げて、「経済格差は世界で最も小さい」と論評する記事を掲載した。たしかに中国人女性は、その7割が「管理職などのポストを望んでいる」との調査結果があるなど、米国女性よりも野心的だと言われている。しかし同時に、家庭における役割が女性のキャリアアップを阻害する要因の一つとなっている。

◆なぜ中国の専業主婦は地位が低いのか
 中国では働く女性が評価される一方で、専業主婦の地位は低いとされている。昨年8月、中国青年新聞社社会調査センターが2006名の夫婦を対象に行った専業主婦に関するアンケート調査では、「女性は専業主婦になるべきだ」と考える割合は26.9%にとどまる。一方、これに反対する人は46.9%だった(鳳凰網)。

 実は、専業主婦を選択することに対して不安を抱える中国人女性は多い。既婚女性の64.4%は「専業主婦になると個人的な成長が小さくなる」と考えている。さらに「社会から孤立する」(57.7%)、「夫が信頼できなくなる」(41.6%)とネガティブに捉える傾向が高い。ただ夫婦の60.5%は「夫の所得が高いと女性は専業主婦になる傾向ある」と回答する。

 中国社会科学院社会学研究所の馬春華氏は、日本と中国の専業主婦に対する認識の違いについて「中国の専業主婦は日本と比べて相対的に低い地位にある。日本の専業主婦は、財布のヒモと物事を決める決定権を握っているが、私たちの国でそうすることは困難」と述べる(鳳凰網)。男女における収入格差の改善とともに、専業主婦に対する中国社会全体の認識の改善も必要なようだ。

Text by 古久澤直樹