スバルWRX、異例の「即・復活」 米で販売41%急落、判断を修正

Subaru of America, Inc.

 わずか1年で、スバルは判断を覆した。WRXのベースグレード廃止後、販売台数は41.2%急落。そこで新モデルを復活させたところ、アメリカのメディアから「実に爽快な存在だ」と称賛が相次いでいる。

◆廃止から1年で復活
 スバルの「WRX」は、全輪駆動とターボエンジンを特徴とするスポーツセダンだ。2024年末、スバルはこのWRXからベースグレードを廃止した。当時は、購入者の多くがより高価な上位グレードを選択していたことが理由として説明されていた

 しかし、この判断はユーザーの反発を招く。最低価格が輸送費込みで3万8920ドル(約600万円)まで跳ね上がり、競合のフォルクスワーゲン「GTI」やヒョンデ「エラントラN」を上回る水準となったためだ。

 こうした状況を受け、スバルは2026年モデルでWRXのベースグレードを復活させる。スバルのプレスリリースでは、ベースグレードの価格はMSRPで3万2495ドルとされており、輸送費込みで3万8920ドルだった2025年モデルと比べると、実質的に5000ドル以上の値下げとなる。

 価格帯はホンダ「シビックSi」に近づくが、全輪駆動である点や最高出力の面ではWRXが上回る。WRXは再び「お買い得なスポーツカー」としての立ち位置を取り戻すことになる。

 方針転換の背景には、販売不振がある。販売実績によると、WRXの販売台数は2024年の1万8587台から、2025年には1万930台へと急落した。落ち込み幅は実に41.2%に達する。値上げ後のWRXは、トヨタGRカローラとわずか1500ドル差という微妙な価格帯に置かれていた。スバルが早期に軌道修正へ動いたのは、こうした競争環境の厳しさを直視した結果だといえる。

◆インフレの時代において「実に爽快」
 軌道修正の成果として、復活したベースモデルには早くも賛辞が集まっている。アメリカの自動車専門サイト『オートピアン』は、「装備を削ぎ落としただけの車ではない」と評価する。

 プレスリリースによれば、ベースグレードであってもプッシュボタンスタートやデュアルゾーンエアコンを標準装備。11.6インチの縦型インフォテインメントスクリーンはワイヤレスのApple CarPlayとAndroid Autoに対応する。18インチホイールを備え、運転支援システム「アイサイト」も全グレードで標準となった。トランスミッションは、ベースグレードでは6速マニュアルのみという割り切った設定だ。

 オートピアンは、「安価な車でさえ不快なほど高くなっているこの時代」において、ベースモデルのWRXは「実に爽快な存在だ」と評している。

 アメリカのユーザーもこの決定を好意的に受け止めている。掲示板サイトのレディットでは、復活したベースモデルの詳細が明らかになると、「Wow, that’s actually… wow(すごい、これは本当に…すごい)」と驚きを示す投稿が寄せられた。「全体的にずっと魅力的になった」と評価する声もあり、ホンダの人気スポーツモデルを引き合いに出して「シビックSiの価格帯に戻った」と喜ぶユーザーもいる。装備の充実ぶりについても、「多くの人を幸せにするだろう」と好意的な反応が目立つ。

◆別モデル復活への期待も
 次期フルモデルチェンジへの期待も高まりつつある。アメリカの自動車専門メディア『ザ・トゥルース・アバウト・カーズ』は、「救いは、WRXの欠点の多くが次期モデルで修正可能な点だ」と指摘する。

 デザインについては好みの問題としながらも、現行WRXには騒音や振動、乗り心地の硬さといった課題があると分析。同メディアは、「WRXならではの荒々しい走りの楽しさを損なうことなく改善できる」とし、「スバルがそれをうまくやり、価格設定も適切であれば、私のようなファンもまた惚れ直すかもしれない」と期待を示た。

 今回の価格戦略の見直しは、スバルがWRXというブランドの価値を守ろうとしている姿勢の表れだといえる。迷走を経て原点に立ち返った同社が、次にどのような進化を見せるのか。ファンの視線はすでに次世代モデルへと向いている。

 なお、価格引き下げの理由をめぐっては、ユーザーによる独自の分析も活発だ。レディットでは、「サプライチェーンや関税の問題を解消できたのか、それとも売上急落を受けて価格設定の誤りに気づいたのか」といった考察が交わされている。あるユーザーは、「いずれにしても、WRXのブランド価値を守ろうとする意思の表れだ」と前向きに受け止めている。

 一方で、将来的なSTI復活を見据えた動きではないかという見方も浮上している。STIはWRXをベースとした高性能モデルで、長年ファンに支持されてきたが、現在は生産を終了している。仮に現行の価格帯のままSTIを復活させれば、価格は5万ドル台に達し、熱心なファンであっても手を出しにくい。今回の値下げは、STI復活時に現実的な価格設定を可能にするため、ラインナップ全体の価格帯を引き下げる布石ではないか——。あくまでファンの観測に過ぎないが、そんな期待を込めた見方も広がっている。

Text by 青葉やまと