【マリ紛争】仏軍が陥ったジレンマとは?
イスラム武装勢力による厳しい統治が続いていた西アフリカ・マリ北部への、フランスの軍事介入が続いている。海外各紙は、現地で熱烈な歓迎を受ける中、微妙な選択を迫られる仏軍の立場や、米国や英国の反応を報じている。
【短期的には目的を達成したが・・・】
仏軍は1月11日に軍事介入を開始。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、その後、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」などの武装勢力をマリとアルジェリア国境沿いの山岳地帯や砂漠に追い込んだという。しかし、彼らは仏軍が到着する前夜に既に逃亡しており、死亡者数は不明だとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。特に、AQIMには北西アフリカ10カ国から兵が参加しており、ロケット砲やマシンガン、重機関銃を備えた装甲車などで武装しているという。
この状況を踏まえた上でオランド仏大統領は、今後も武装勢力の掃討を続けながら軍事作戦の終結を模索しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。解放の喜びに湧くトンブクトゥ群衆への演説の中でも、「国の安定をもたらす責任があるのはマリの人々だ」と強調した上で、支援する方針を明らかにしている。
一方ニューヨーク・タイムズ紙は、フランスは今後の介入について微妙な選択をしなければならないと指摘している。前線に長居してマリ軍と共に戦い続ければ“新植民地主義”とみられ、ネガティブな世論を巻き起こすリスクが生じる。しかし、前線を退きマリやアフリカ軍を支援する立場に移れば、生じる可能性の高い民族間の抗争を無視していると非難されるリスクが生じる。実際、仏軍介入前は、AQIMを支援していたとされるアラブ系やトゥアレグ系の市民を、一般市民が虐殺した事件もあったという。
【諸国の目】
フィナンシャル・タイムズ紙は、ブレア元英首相がテレビ番組に出演した際、フランスのマリ介入を支持すると語ったことを取り上げている。同氏はまた、1月にアルジェリアで起きたイスラム武装勢力による人質事件を受け、キャメロン英首相がG8(主要国首脳会議)でイスラム過激派対策を最重要課題の一つとして取り上げることに対しても同意を示した。西洋諸国は今後、何世代にも及ぶ長期的なスパンでイスラム過激派との戦いに直面していくとしたものの、イギリスの軍事介入については明確な発言は控えているようだ。問題が起きている国を助けようとすることは長い歳月がかかるうえに、一度、軍事介入を行えば、撤退するタイミングを決断することも困難になってくるとし、難しい問題だとした。
またニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、米国は仏軍戦略のスピードと効率を称えた上で、長期的な視点からの問題解決にはまだ至っていないと述べているという。本当の成果とは今後の軍事作戦によってイスラム過激派の息の根を止められるかどうかだとしている。