イラン、核協議に前向きに変わった背景とは?
ミュンヘン安全保障国際会議に出席しているイランのサレヒ外相は3日、イランと6ヶ国の協議が「今月25日にカザフスタンで行われると聞いた」と説明した。ただ、これを提案した6ヶ国(安保理の5常任理事国とドイツ)側の報道官は、イラン側から公式な返答はないとしている。この核協議は、昨年6月のモスクワ会合以来となる。
シリアやマリなど、中東・アフリカ各国でイスラム武装勢力の活動が活発化している現在、それらとつながりを持ち武器供与を行っているとされるイランとの協議が持つ意義は極めて大きいとされる。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、サレヒ外相は、アメリカのバイデン副大統領がイランとの2国間直接交渉の用意があると申し出たことに対しても「一歩前進」と評価。「前向きに検討」する旨を表明した。ただし、「過去の交渉を無にしてきたのは常に“相手側”だった」と述べるなど、アメリカ側に公正かつ真剣に問題を解決する意志が必要だとしているという。
バイデン副大統領も、アメリカが2国間協議を行う前提として「具体的で明確な内容が議題として用意されていること」と明示したとされる。
一方、イランの核開発をめぐる各国との協議は、2012年、3回不調に終わっているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。ニューヨーク・タイムズ紙は、濃縮ウランの廃棄を条件にすべての制裁解除を求めるイランに対し、濃縮の停止と、同国が原子力武器プログラムを有していないというIAEA(国際原子力機関)のお墨付きを求める各国が対立し、イランがIAEAの立ち入りを頑強に拒んできた経緯があると指摘した。
さらにウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、パネッタ米国防長官は、携帯式地対空ミサイル(マンパッド)を同盟関係にある武装勢力に密輸出しようとするイランの動きを、中東の不安定化とともに、民間航空機へのリスクをも増大させると強く警戒しているという。現在、米国主導の多国籍軍事演習がアラブ首長国連邦で行われているのにも、イランの武器や兵器の密輸阻止のため、アラブ諸国の能力を向上させる目的がある模様だ。近く退任するパネッタ国務長官の後任に指名されているチャック・ヘーゲル氏は、軍事介入に消極的とされるが、イランの核計画に対処する上であらゆる選択肢を検討するという点では、すでに意見の一致を見ているという。
最後にフィナンシャル・タイムズ紙は、経済制裁のため40%というインフレに苦しむイラン国民が、各国との対立を深める現政権に反旗を翻すことも十分に考えられるとし、今年の夏の選挙が、「外圧に強い」イランの今後を占う鍵になるとの見方を示した。