女性の性欲改善薬「アディ」、閉経後65歳まで服用可に 米FDAが範囲拡大

女性用性欲増進薬アディのボトル|Allen G. Breed / AP Photo

 アメリカの保健当局は、女性の性欲を高めることを狙った賛否の分かれる薬の承認範囲を拡大した。1日1回飲む錠剤が、閉経後で65歳までの女性も服用できるようになった。

 アメリカの食品医薬品局(FDA)は22日の発表で、この薬の使用対象を、閉経を迎えた高齢の女性へと広げた。錠剤の「アディ(Addyi)」は10年前、性欲の低下によって精神的ストレスを訴える閉経前の女性向けに初めて承認された。

 スプラウト・ファーマシューティカルズが販売するアディは当初、女性の健康分野で重要なニッチを埋める大ヒット薬になると期待されていた。だが、めまいや吐き気など不快な副作用があり、アルコールと併用する危険性について安全警告も付されている。

 枠付き警告では、服用中に飲酒すると危険なほど血圧が下がり、失神するおそれがあると注意喚起している。何杯か飲んだ場合、表示では数時間待ってから薬を飲むか、1回分を飛ばすことが推奨されている。

 気分や食欲に影響する脳内の化学物質に作用するアディの売上は、ウォール街が当初見込んだほどには伸びなかった。2019年にはFDAが、女性の性欲低下に対する2つ目の薬として、必要に応じて使用するタイプの注射薬を承認した。こちらは別の神経系の化学物質に作用する。

 スプラウト社の最高経営責任者(CEO)であるシンディ・エッカートは声明で、今回の承認は「女性の性的健康がどのように理解され、優先されるべきかを根本的に変えるため、FDAと粘り強く10年にわたり取り組んできた成果を反映している」と述べた。ノースカロライナ州ローリーに拠点を置く同社は、22日のプレスリリースでFDAの更新を発表した。

 性欲が問題となるほど低い医学的状態は、低活動性性欲障害(HSDD)と呼ばれる。これは1990年代から認識されており、調査によればアメリカの女性の相当数に影響していると考えられている。1990年代に男性向けのバイアグラが大成功を収めた後、製薬各社は女性の性機能障害に関する研究や治療法の可能性に資金を大量に投じ始めた。

 ただし診断は複雑だ。性欲に影響する要因が多く、とりわけ閉経後は、ホルモン低下がさまざまな生物学的変化や医療上の症状を引き起こす。医師は薬を処方する前に、関係性の問題、身体疾患、うつ病やその他の精神疾患など、複数の要因を除外することが求められている。

 この診断は普遍的に受け入れられているわけではなく、性欲の低さを医学的問題とみなすべきではないと主張する心理学者もいる。

 FDAは2015年の承認前にアディを2度却下しており、その理由として効果が限定的であることと、副作用への懸念を挙げていた。承認は、企業とその支援団体「イーブン・ザ・スコア(Even the Score)」によるロビー活動の後に実現した。同団体は、女性の性欲に対する選択肢の不足を女性の権利の問題として位置づけていた。

By MATTHEW PERRONE

Text by AP