新iPadとChromebook、教育現場を制するのは? アップルの弱みと強みとは
アップルは3月27日、新型iPadを発表した。同製品は、その発表会をアメリカ・シカゴにある学校で開催したことからもわかるように、教育現場への導入を強く意識したものである。もっとも、アメリカの教育現場では同社のライバル企業がOSを提供するPCが普及しており、このPCと同製品の教育分野での対決が注目されている。
◆廉価と高性能を両立
アップルは、3月27日付のプレスリリースで新型iPadの概要を解説している。同製品の最大の売りは、従来は同社タブレット端末のハイエンドモデルであるiPad Proのみで使えたペン型入力デバイスのアップル・ペンシルに対応したことだ。この対応に関して、同社プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのグレッグ・ジョズィアック氏は「わたしたちが提供するもっとも人気があり廉価なiPadがアップル・ペンシルのサポートを始めることで、もっともクリエイティブなツールの先進的な能力がさらに多くのユーザにもたらされるのです」とコメントしている。
また同製品のディスプレイは、ゲームアプリ「ポケモンGO」に見られるようなAR体験に最適化されている。ARアプリのために製品の動きを探知する加速度センサーや、製品の傾きを測定するジャイロスコープを再設計した。そのほか、アプリの同時起動にも対応している。以上のような高性能なタブレット端末が、アップル・ジャパンのプレスリリースによると、最安値のモデルで37,800円、学校が購入する場合は35,800円となる。
◆そのユニークさがあだとなる?
以上のような新型iPadに関して、テック系ニュースサイト『PCMag』は、すでにアメリカの教育現場で普及しているグーグルが開発するChromeOSを実装したPCであるChromebookと比較する記事を掲載した。その記事では、新型iPadが学校購入価格で299ドル(約32,000円)と低価格を実現したことで、同社が教育現場に同製品を普及させようと意図していることを評価している。
その一方で同製品の弱点を2点指摘している。ひとつめは、現在教育現場で普及しているPCの多くがゴム製のバンパーや防水加工に対応しているのに対して、同製品は子供が乱暴に扱っても大丈夫なようには設計されていないことをあげている。もうひとつは、同製品を外部機器に接続するための手段が、アップルが独自に開発したライトニングコネクタしかないことだ。この弱点によって、同製品を学校教室にあるプリンターやプロジェクターに接続する際には、高価な変換アダプタが必要となるうえに接続作業が複雑になってしまうのだ。
◆やっぱり高い? しかし……
ビジネスニュースサイト『ファストカンパニー』も、新型iPadとChromebookを比較した記事を掲載した。同記事によると、同製品の売りとも言えるアップル・ペンシルとの連携に関して、調査会社テックナリシス・リサーチのアナリストであるボブ・オドネル氏は「アップルが新型iPadを世に紹介したことは前進するためのよいステップではあるが、アップルは新型iPadとアップル・ペンシルを合わせると、ほとんどの学校にとって高価なものとなってしまうという基本的な事実を無視してしまっている」とコメントしている。それゆえ、予算が厳しい学校がChromebookより新型iPadを購入するようになるまでには困難があるだろう、と同記事は評している。
価格については批判的である一方で、同記事は同製品と同時に発表された教室管理アプリを含む教育系アプリについては違いを生み出し、同製品を中心とするエコシステム(製品どうしのつながり)を完成させるものとして評価している。こうした教育系アプリに関して、調査会社クリエイティブ・ストラテジーズのアナリストであるカロリーナ・ミラネシ氏は「アップルは教室を管理するだけではなく、授業を行うことができるソリューションを示しています。それゆえ、教師は自分たちが使っているアプリから良い見返りが得られているかどうか、効果的な仕方で確かめることができます」「何より重要なことは、アップルが多数の機能よりはむしろひとつのソリューションを提供しているように感じられることなのです」と述べている。