イラン、サルの宇宙打ち上げ成功 そのねらいとは?
イランは28日、サルを乗せたロケットを打ち上げ、120kmの高さに達した後、生還させることに成功したと発表した。2020年を目標にしている有人宇宙飛行に向けた大きな一歩だとしている。正確な打ち上げの日時やその他の詳細は明らかにしていない。国営テレビが報道した静止画像には、打ち上げられたとされるサルが防護服のようなものを身につけ、チャイルドシートのような装置に固定されていた。
現在イランは核兵器開発疑惑がかけられており、欧米諸国から経済制裁を受けている。ロケット技術は核ミサイルに転用可能なため、今回の打ち上げに対して警戒する見方もある。
少なくとも直近で軍事的活動に繋がる要素はないという専門家の分析を、ニューヨーク・タイムズ紙は取り上げている。大型ロケットであればともかく、打ち上げられたロケットは古く小さなタイプであるため、イランが目標としている有人宇宙飛行の実現に向けた一歩であり、発表が事実であれば、同国はゆっくりではあるが着実に生命維持の技術を開発しているとした。
またフィナンシャル・タイムズ紙は、有人宇宙飛行には非常に高い技術が必要となる一方で、現在の技術では宇宙で人間ができることは非常に限られているため、その必要性を疑問視する国も少なくないとする専門家の指摘を取り上げている。では、何故イランは人間の宇宙飛行にこだわっているのか。その理由として「ニュース性のある科学的な成果をだす事への憧れ」があると分析されている。宇宙開発に積極的な中国やインドなどよりもずっと遅れているイランが、真剣に宇宙開発をしたければ、他国と共同で行うだろうと指摘した上で、自国内での技術発展を目指しているとみている。
イランは2009年に初の国産人工衛星オミードの打ち上げに成功しており、11年、12年にも相次いで衛星の打ち上げを行なっている。軍事的な観点では、イスラエルやヨーロッパ諸国を脅かす程の強力なミサイル兵器を開発しており、技術の発展次第では、米国さえも標的にできるミサイル開発が可能になると懸念されている。ニューヨーク・タイムズ紙は、今回の打ち上げにサルを乗せたことはプロパガンダ的要素も含み、平和的開発をアピールし、軍事的な面をカモフラージュしていると指摘する声を取り上げている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、今後の宇宙開発の詳細は明らかではないが、すでに首都近郊にミサイル発射台と人工衛星の監視施設を設置しているという。
なお各紙とも、2011年に打ち上げられたサルが途中で死亡していることから、今回の成功報道の信憑性自体あてにならないとの声も報じている。