エジプト「非常事態宣言」の影響は?海外紙が分析
27日夜、エジプトのモルシ大統領は、テレビで演説を行い、ポートサイド、イスマリア、スエズに対し、非常事態を宣言。30日間にわたる、夜間外出禁止令を出した。また、暴動鎮圧のために必要とあれば、さらに断固とした行動を取ると断言。同時に、この国家的な危機を乗り越えるために、対立する政治指導者らに対し、28日からの対話を呼びかけた。
各地で噴出する民衆の政権不満を、モルシ大統領は抑えきれるのか。海外各紙はそれぞれの観点からエジプトの今後に切り込んだ。
ポートサイド市の大規模デモのきっかけは、26日に、21人の同市民に対して下された死刑判決だったという。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、被告らは、去年、カイロを拠点とするチームと、ポートサイドを拠点とするチームが対戦するサッカーの試合で起き、74人の死者を出した暴動事件の逮捕者。被害者が集中したカイロ側では、水曜、厳しい判決を求めて、橋の寸断や都市機能の分断などの事件が起きていたという。
反対にポートサイドでは、死刑という「厳しすぎる」判決が出たことで親族らが、被告を奪還しようと拘置所を襲撃。警察官などと衝突し、大規模デモに発展した模様だ。7人の死者と何百人もの重軽傷者を出したデモの後、住民らは棺の列について練り歩き、モルシ氏への反発を叫び、死者の復讐を誓ったという。
これに対し、スエズで少なくとも11人の死者を出したのは、ムバラク前大統領が追放された「革命」の2周年に行われた反政権デモだった。
各地で連発する暴動を鎮圧するために、政権内部などから大統領の強権発動を強く求める声もあり、モルシ氏の「非常事態宣言」はこれに応えたものとみられている。しかし、一方でこれを両刃の剣の評したのはウォール・ストリート・ジャーナル紙だ。同紙は、27日のモルシ氏の演説の身振り口ぶりが、政権末期のムバラク氏を彷彿とさせると分析。昨年5月に失効した、当時の「非常事態法」が、民衆の怒りと反発に火をつけた「反ムバラク」の象徴だったことを挙げ、今回のモルシ氏の「おいたのやまない子どもを叱りつけるような」態度への民衆の怒りの声を紹介した。実際、ムバラク政権打倒に中心的役割を果たした活動家は、「今回、初めてムバラクは(モルシよりも)ずっとましだったと思った。彼を倒すまで、戦い続ける」と決意を表明したという。
フィナンシャル・タイムズ紙はポートサイドの暴動を紹介したのとは別の記事で、今のエジプトの状況を、「政治的コンセンサス」がない結果の「苦痛に満ちた移行期」と分析。学識者の、「法と秩序の喪失」と「政治家の無能」への嘆きの声や、各勢力の分裂が、国のあり方を根本的に見直す「革命」後の貴重なチャンスを台無しにしたという非難を紹介した。今なお、おなじみの「外国人や雇われ悪党」に責任をなすりつけるモルシ大統領も、ことあるごとに現政権の揚げ足を取り、対話の条件として自らに有利な見返りを求める反対派勢力も、街頭の声を聴いていないとした。