「外交オリンピック」開幕 米韓朝のせめぎ合い、金メダルはどの国に?

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 2月9日、韓国で平昌オリンピックが始まった。オリンピック開催まで「平壌オリンピック」と揶揄されたように、北朝鮮外交の動きに多くの注目が集まっていた。関係各国の外交上の駆け引きはオリンピック中も継続されると考えられ、さながら「外交オリンピック」の様相を呈している。

◆北朝鮮はすでに敗者?
 USAトゥデイ紙は、平昌オリンピック開催までの活発な外交的アピールとは裏腹に、北朝鮮はすでに制裁によって追い詰められていると評している。同紙はその証拠として、金正恩氏が今年はじめの演説において、北朝鮮の国民が生活上の困難に直面していることを認める発言をしたこと、また、経済制裁によって石油輸入量が制限されているなか、東シナ海上で石油の密輸現場を衛星写真でおさえられたことを挙げている。

 さらに同紙は、北朝鮮が韓国と融和ムードを演出して日米韓の同盟関係にくさびを打ち込もうとしていることこそ、北朝鮮が追い詰められている決定的なサインであると述べる。追い詰められているからこそ、日米韓の関係に亀裂を入れようと躍起になっているというわけである。そのうえで、北朝鮮の動向を静観していれば、いずれ経済制裁がさらに効いてきて同国は根をあげるだろう、と見ている。

◆このままでは北朝鮮が金メダル?
 一方でニューヨーク・タイムズ紙は、「北朝鮮が策謀の金メダルを獲得するのか?」と題した記事を掲載した。その記事では、平昌オリンピックに参加する現在の北朝鮮は、大韓航空機爆破事件を起こしながらも結局はソウルオリンピックに不参加だった金正日氏の時代と比べて、外交的にはるかにうまく立ち回っていると評価している。そして、このまま平昌オリンピック開催中に北朝鮮に注目が集まり続けることは、北朝鮮の外交的勝利を意味する、と言う。

 それでは、北朝鮮の外交的勝利を阻止する方法はあるのだろうか。同記事は、平昌オリンピック閉幕後の情勢に注意を向ける。オリンピックが終わり、再び朝鮮半島が緊迫した状態に戻った場合は、北朝鮮の外交的勝利となる。というのも、世界の注目を集めるという同国の思惑が達成されるだけで、そのほかは現状と何も変わらないからである。反対にオリンピック閉会後、朝鮮半島情勢を平和的に解決する方向に向かわせることこそが、北朝鮮の勝利を阻止することにつながると主張する。そして、オリンピックにはものごとを平和的解決に向かわせる力がある、と力説している。

◆アメリカの圧力、韓国の思惑
 しかし、現実にはオリンピックによって平和的解決に導かれる兆しはまだない。それどころか、緊張が高まっているとさえ言える。韓国のハンギョレ紙は、オリンピックにあわせて韓国を訪問しているペンス副大統領が、訪韓中に北朝鮮への圧力と見られる行事に参加することを報じている。そうした行事の一環として、ペンス氏は北朝鮮から意識不明の状態で帰国しその後死亡した大学生オットー・ワームビアさんの父親フレッド・ワームビアさんを開会式に招待した。さらには、韓国海軍の艦艇が北朝鮮からの攻撃で沈没した2010年の天安沈没事件を受けて建てられた記念館を訪問する。

 同紙は、南北対話によってアメリカと北朝鮮の対話を促そうとしている韓国政府にとって、ペンス副大統領の一連の行動は大きな障害となるだろう、としている。以上のように平昌オリンピックはスポーツの祭典であると同時に、朝鮮半島情勢をめぐる外交を競わせる舞台ともなっている。

Text by 吉本 幸記