アルジェリア事件 そのとき、何が起こっていたのか?
アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス施設で16日未明に発生し、21日に多くの犠牲者の発表によって収束した、イスラム武装勢力による外国人拉致事件。事件はなぜ、どのように、起こったのか。保安上の問題はなかったのか。次なる悲劇は防げるのか。海外各紙は新情報に着目しながら、改めて事件を振り返った。
生還者の経験を介して「試練の4日間」に迫ったのはウォール・ストリート・ジャーナル紙。38歳のストラチャン氏は16日、部屋を出ようとしたときに、尋常ならざる騒ぎに気がつき、友人と室内に身を潜めた。そのまま、17日午後に軍に解放されるまで、飲まず食わずでひたすら耐えた。37歳のBP社員、ライト氏は、プラントに隣接する建物に隠れていたが、木曜午前、フェンスを破って活路を開こうとするアルジェリア人に同行。難を逃れた。一方、36歳のマクフォール氏は人質としてバスに乗り、クレー状の爆発物を体につけられていたが、別の車が砲撃を浴びた隙に逃亡に成功したという。
今、北アフリカで何が起こっているのか。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、アルジェリアの官僚が、犯人グループ中のエジプト人数名が、昨年9月のリビア・ベンガジでの米領事館襲撃事件にも関与していたと述べた。当人たちはアルジェリア軍に殺害されたが、生きて確保されたその他3名の犯人が取り調べを受け、供述を始めたのだという。
これが事実だとすれば、聖戦主義者が国境を越えて拡散しつつある証になりうる。クリントン米国務長官も、ベンガジ事件後、イスラム過激主義の派閥を超えた協働と、マリ北部の掌握が「覇権を広げるための安全な拠点」になりうることへの警鐘を鳴らしていたという。
もっとも、この政府筋の情報の確認は取れていない。はっきりしているのはアルジェリアが、今回の事態を「アラブの春」の置き土産だと考えていること、そして、アメリカに「安易な民主主義の標榜」を諌めようとしていることだという。この人物は、「アラブの春」後、同国を取り巻く真空地帯が、過激派が国境を越え、武器を入手するのを容易にしたことを暗に非難し、作戦が「性急過ぎたのではないか」という英米政府の疑問を一蹴している。同氏によれば、アルジェリアではこのような作戦の決定権は軍にあり、今後も起こるであろう事件に対し、同様の作戦で応じる構えだという。
一方フィナンシャル・タイムズ紙は、このような危険地帯にある設備の保安状況に、そもそも問題はなかったのかを検証した。
アルジェリアの法律下では、企業に、私的な保安請負人の使用は認められていないが、武器を持った護衛の動員は認められている。今回の天然ガス施設の関係各社がこの権利を行使していなかったことで、「もし、していれば」被害の拡大を防げたのかが焦点となっている模様だ。しかし、専門家の談によれば、実際、今回のように周到に用意され統制された犯行に、武装した護衛が対抗できた可能性は極めて低いという。