海外から見た明治維新 150年後の今と状況似ているという指摘も
明治維新から150年目となる2018年を迎え、国内では節目を祝うイベントが各所で予定されている。しかし、歴史ロマンのムードに沸く日本とは異なり、海外の大手誌は日本の近代化を冷静に振り返る記事を掲載している。維新による封建時代からの脱却が評価される一方、海外にどこまで追随するかで悩んだ姿勢は、現在の日本にも通じるものがあるという指摘も出ている。
◆西洋の仲間入り
英誌エコノミスト(1月11日)は「尊皇攘夷」をキーワードに明治維新を概説する。徳川幕府時代に商業と文化は栄えたが、鎖国により孤立していた。そこへ西洋からの武装船団が開国の圧力をかけ、幕府はこれに屈した。尊皇攘夷運動の高まりで若きサムライらが徳川幕府を倒幕し、これが日本の近代化の始まりであったとする。今年は戊辰戦争や明治維新が起きた1868年から150年となる。
後の明治天皇に政治の実権を返還することで「尊皇」は実現したが、海外からの野蛮人の駆逐を意味する「攘夷」からはかけ離れていたと同誌は見る。政府高官らが欧米の視察旅行に出るなどし、海外の考え方を吸収したためだ。日本は「西洋の晩餐会で出される肉になるか、テーブルに着くゲストになるかの厳しい選択を迫られていた」が、欧米文化を取り入れ近代化に成功したことにより、西洋社会と同じ席に着くことができたとする。
この姿勢は米誌アトランティックも、「脱亜入欧」という用語を挙げて解説している。封建時代が終えんを迎え、日本の思想家らは脱亜入欧の方針を唱えた。これまで何世紀にもわたってモデルとしてきた中国の追従をやめ、ヨーロッパを参考にするという大きな転換があった。欧米思想の取り入れが日本の近代化に大きく影響したという見方は各誌に共通している。
◆評価
近代化を遂げた日本に対し、確実にリベラルな国になったとアトランティック誌(1月3日)は評価する。「文化的には依然として大いに保守的な国ではあるものの、日本の文化改革、法の支配、男女平等などは、同国を自由主義の国々の一員としてしっかりと位置付けている」との評価だ。女性差別などが残るとしつつも、アジア地域のライバルである中国との比較において、中絶の強制や少数民族の軍事的弾圧を行っていない点を評価する。
一方、エコノミスト誌は「明治維新は近代化だけでなく軍国主義の始まりであった」とし、負の側面を指摘する。西洋の大国を真似て海外へ侵攻し、台湾、韓国、満州へ勢力を伸ばした歴史を記事は紹介している。またアトランティック誌は、維新後は国内にも問題があり、家制度に基づき個人の人権が法的に制限されていたほか、小作人が地主に搾取されやすい構造になっていたという。こうした日本内外の問題は、第2次大戦に破れアメリカによる占領が行われる中で改善されたと記事では説明している。
◆揺れる日本
欧米のコンセプトに追随してきた日本だが、独自の姿を打ち出しあぐねているという見方もある。アトランティック誌が指摘するのは、明治維新期と現代の姿の類似性だ。明治政府誕生直後、現代的な日本とはどうあるべきかという方向性を見出すのに苦心したと同誌は見る。現在、バブル崩壊と人口減少に悩む日本は、経済規模で中国に抜かされ、自国より強力な国々に直面している。海外と渡り合い、影響力を示すための方針が現代でも問われているとのことだ。
エコノミスト誌は、高齢化や人口減少などの国内問題に加え、経済のみならず軍事面でも圧力を強める中国への対応を課題に挙げる。また、現政権による方策として、女性の登用などによる経済の復興や、活発な外交政策、そして国防の強化を現政権の政策を紹介する。記事は、安倍首相が明治維新を主導した長州(現在の山口県)の出身であることを指摘している。
歴史的懐古主義に留まらず、現行の政治問題と絡めて明治維新を振り返る各誌の記事は興味深い。