一夫多妻婚を再考する 新研究が一夫一妻婚優位の通説を覆す
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著:David W. Lawson(カリフォルニア大学サンタバーバラ校、Professor of Anthropology)
ウガンダの裁判所は2025年7月、複婚(polygamy)の合法性を争う訴えを、宗教的・文化的自由の保護を理由に速やかに棄却した。長年にわたり複婚を「有害な文化的慣行」と位置づけてきた多くの社会科学者や政策担当者にとって、この決定は、予想はしていたものの、より健全で平等な社会づくりの努力にとって不本意な後退となった。
複婚の圧倒的多数は、一人の夫が複数の妻を持つ形、より正確には一夫多妻制(polygyny)である。語源はギリシャ語の「poly(多い)」と「gynē(女性・妻)」だ。これと反対に、一人の妻が複数の夫を持つ形は一妻多夫制(polyandry)と呼ばれ(「anēr」は「男性・夫」の意)、これは世界的に極めてまれである。
一夫多妻制の批判者は主に二つの論点を示す。第一に、地位の低い男性が結婚市場から締め出され、未婚男性の不満によって社会不安や犯罪、女性への暴力が生じるという点。第二に、扶養すべき人数が増えることで限られた資源が分散し、女性や子供に害を及ぼすという点だ。
この論理から、有力な政治学者ローズ・マクダーモットは一夫多妻制を「悪」だと表現している。さらに人類学者のジョセフ・ヘンリックは、キリスト教による一夫多妻制への嘲笑と否定が西洋の繁栄を駆動した要因だとまで主張する。
しかし、最高水準のデータ分析に依拠する新たな三つの研究は、こうした議論が誤解に基づくと主張している。
筆者は人類学とグローバルヘルスの交差領域で、家族構造がどのように、なぜ多様なのか、そしてその多様性が人間の幸福に何を意味するのかを研究してキャリアを積んできた。この仕事の多くは、ウガンダと同様に一夫多妻制が比較的一般的なタンザニアの同僚たちとともに行ってきた。今回の一連の研究は、善意や直感が文化的感受性とエビデンスの代わりにはならないことを実証的に示し、私たちの研究の意義を裏づけるものだ。
◆一夫多妻制は男性を結婚から締め出すのか
2025年10月に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された新研究は、一夫多妻制と男性の結婚見通しについて初の包括的大規模分析を提示した。人口学者ハンプトン・ギャディ、進化人類学者のレベッカ・シア、ローラ・フォルトゥナートの共同研究によるものだ。
研究チームは、アフリカ・アジア・オセアニアの30か国からの8400万件超の国勢調査記録と、アメリカの一部共同体で一夫多妻制が行われていた1880年のアメリカ国勢調査全体を含む膨大なデータに加え、人口モデルを用いた。その結果、一夫多妻制が多数の男性を結婚から締め出すわけではないことが示された。実際、多くの状況で、一夫多妻制が一般的な地域の方が男性の結婚率は高い。
一夫多妻制が孤独な独身男性を生むという物語は直感的だ。男女が同数の共同体で一人の男性が二人の女性と結婚すれば、別の男性が未婚のままになる。これを社会全体に広げれば、恨みを抱いた独身男性の大群が生まれるように見える。
同様の議論は、アメリカを含む一夫一妻制の国々で台頭するインセル(「involuntary(非自発的)」と「celibate(独身)」を合わせた造語)サブカルチャーについても展開されている。ここでは、高い地位の男性が低い地位の男性を性的にも社会的にも疎外し、最終的に暴力につながるという主張だ。
しかし、実際の人口動態はそれほど単純ではない。女性は一般に男性より長寿であり、男性はしばしば年下の女性と結婚する。さらに世界の多くの地域で人口は増加しており、年長世代には若い配偶者が相対的に豊富だ。これらは多くの現代アフリカ諸国に見られる特徴で、婚姻市場を女性余剰に傾ける。現実的な条件下では、相当数の男性が複数の妻を持っても、同輩の男性が結婚の機会を失うとは限らない。
実際、調査対象国のほぼ半数で、一夫多妻婚率が高いほど未婚男性は少なかった。期待された正の関係が見られた国はごく一部で、しかも時期によって一貫しなかった。
北米の歴史的なモルモン共同体の事例も同様に示唆的だ。研究者らが1880年の国勢調査で、一夫多妻制が確認されたモルモンの郡とそれ以外の郡を比較すると、一夫多妻制の地域の方が未婚男性率は低かった。ギャディらは、一夫多妻婚を好む文化規範は一般に出生促進的(pronatalist)であり、その結果、社会全体の結婚率を押し上げると説明している。
◆女性と子供は取り分を減らされるのか
では、男性が所有する富をより多くの扶養家族で分け合うため、一夫多妻制が女性や子供に害を与えるという議論はどうか。確かに、一夫多妻制と健康悪化の関連を示す研究は存在する。しかし、相関は因果を意味しないという考え方もある。
10年前、私と同僚はタンザニアの50以上の村を比較し、一夫多妻制が食料不安や子供の健康不良と関連していることを報告した。だが、これは、一夫多妻制が多い地域の多くが、干ばつと医療不足に苦しむ社会的に不利な立場のマサイの地域社会だったことを反映したにすぎない。同一共同体内で家族同士を比べると、一夫多妻制の世帯は一般により裕福で、女性にとってこの婚姻形態が魅力的となる要因でもあり、子供が不利だという結果にはならなかった。
これと呼応して、人類学者リアナ・ミノチャーらは、タンザニアの別地域で20年にわたる前向きコホートの詳細な縦断データを用いた研究を最近発表し、数千人の子供の生存・成長・教育を分析した結果、一夫一妻婚が有利だという証拠は見いだせなかったと報告した。
これらの結果は「一夫多妻制の閾値モデル(polygyny threshold model)」と呼ばれる理論を支持する。簡単に言えば、女性に結婚の選択権がある限り、夫を共有することが経済的に不利とは限らない。費用を相殺できる十分な富を持つ男性を優先して選ぶからだ。すべての文脈に当てはまるわけではないが、これらの研究は一夫多妻制が一義的に有害だという主張を明確に弱める。
◆では、一夫多妻制は無害なのか
これらの研究は、一夫多妻制が無害だという意味ではない。実際、男性にのみ複数配偶を認める制度は明らかに不平等で、女性を男性に従属させる父権的イデオロギーと結びついている。たとえば近年の研究では、一夫多妻制の婚姻は親密なパートナー間暴力が生じやすい可能性も示唆されている。
要するに、一夫多妻制が有害となり得る側面は複数ある。
それでも、最良の証拠が示すのは、一夫多妻制が社会不安の根本原因となる可能性は低いという点だ。さらに、婚姻形態にかかわらず多くの女性が経済的・社会的な安全を得にくい広範な父権的制度の下では、一夫多妻制は単なる容認可能な選択にとどまらず、状況によっては男女双方に具体的な利益をもたらす好ましい取り決めとなり得る。
一夫多妻制の危険性を単純化した物語は説得力があり直感的だが、世論を誤導し、西洋文化の優越という根強い観念を補強し、より重要な取り組みを脇に追いやることで効果的なグローバルヘルス政策を損なうおそれがある。より健全な社会を築くには、証拠に目を凝らし、あらゆる家族形態が害を生む可能性をはらむことを受け入れる必要がある。
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom
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