緊張緩和ムード、美女軍団に騙されるな 北朝鮮の「時間稼ぎ」に日米が警鐘
韓国と北朝鮮は17日の次官級の実務協議で、平昌オリンピックに北朝鮮側から230人規模の応援団を送ることなどで合意した。南北の協議に対し国際社会は、緊張緩和への第一歩であるとの評価を与えている。しかし北朝鮮が核開発の中止に向けた具体的姿勢を示していないことから、五輪参加は核開発の時間稼ぎではないかとの見方を日米は示し、警戒を強めている。
◆南北関係改善へ一歩
CNNでは、韓国と北朝鮮の関係がここ数年で最も緩和したとの見方があるとし、協議実現の成果を伝えている。140人規模のオーケストラと選手団に加え、230人規模のチアリーディングチームなどを北朝鮮から派遣することで両国は合意した。韓国側は女子ホッケーの合同チームの編成も提案している。協議を受けIOCは、金曜に検討を行うとしている。
ただし韓国国内の反応は芳しくない。ロイターは、特に合同チームに関し、選手らからは怒りの反応が寄せられていると報じる。全く見知らぬ選手と突然の協力を迫られることから、反対の声が挙がっているようだ。
そもそも北朝鮮の五輪参加に反対する世論も韓国国内に根強い。CNNによると、核問題での妥協なしに北が参加することにより、国際的な舞台で力を誇示する機会を与えかねないとの意見があるようだ。
◆時間稼ぎに警戒
北朝鮮の五輪参加について日本の河野外相は、時間稼ぎであるとの見方を16日の国際会議の場で示した。この会議はカナダのバンクーバーで開かれたもので、20ヶ国の外相が北朝鮮問題を議論した。BBCによると、北朝鮮が冬季五輪に応援団の派遣を検討していることを受け、世界は北朝鮮の「魅力攻勢」に騙されるべきでないと河野氏は訴えた。朝鮮半島の緊張を緩和すると期待されてきた南北会談だが、北が協議に応じただけで制裁緩和を議論するのは緩すぎると牽制した形だ。核開発の時間稼ぎをしているだけだとし、国際社会に警戒を呼びかけた。
記事によると、アメリカのティラーソン国務長官も日本に同調し、制裁強化を主張したようだ。会議参加の20ヶ国は共同声明を発表し、国連が行っている制裁よりもさらに重い制裁の実施を検討することで合意した。
CNNでは、ティラーソン氏が会議の中で、北朝鮮が非核化への道筋を示すまで圧力をかけ続けるとの意向を表明したと伝える。また、北朝鮮周辺地域の火力の配備を強化するなど、同国への対応を強めているようだ。グアムには核を搭載できない従来の爆撃機に代わる形で、核武装可能なB-52爆撃機6機を配備した。
◆会談への評価
北朝鮮の五輪参加を巡ってはさまざまな議論がある。BBCの報道によると、バンクーバーの会議に出席した20ヶ国の外相らは制裁強化の方針で一致する一方、現在進行中の南北対話への支持も表明した。
CNNによると韓国外相は対話を大きな前進だと捉えているようだ。しかし北朝鮮が非核化という国際的責務を果たす意思を示していないことから、道のりは長いとも認識しているという。記事ではまた、スムーズな五輪開催のため合同演習を延期した米韓に対し、北朝鮮が核保持の路線に固執している点も指摘する。
CNNでは、ハーバード・ケネディスクールの専門家の見解として、対話はオリンピック参加をめぐる限定的な目的に留まるとの指摘を掲載している。対話が北朝鮮問題のブレイクスルーになるとの捉え方は誤りだとの立場だ。
この見方を裏付けるように、ロイター(1月17日)は核開発中止を拒否する北朝鮮の姿勢を伝えている。北朝鮮国営紙は今週の紙面で、核開発中止を迫れば南北朝鮮の関係が台無しになると警告した。「南北朝鮮関係の改善に向け我々は積極的に動くが、統一を阻害する動きに対しては静観しない」との意思を表明している。