トランプ大統領、「国境の壁」拡張に10年で2兆円を計画
トランプ政権は米・メキシコ間の「国境の壁」の大幅拡張工事に向け、10年間で180憶ドル(約1兆9,933億円)の予算を提案。大統領選挙の際の代表的な公約をどのように実現するつもりなのか、最も詳細な計画がひとつ明らかになった。
「国境の壁」に関する情報を実際に見聞きしたという米政府職員によると、アメリカ合衆国税関・国境警備局は、2027年9月までに、壁を316マイル(505キロ)拡張したい意向を示しており、実現すれば、壁の全長は米・メキシコ国境のほぼ半分にあたる、970マイル(1,552キロ)に及ぶ。
さらに同職員によると、税関・国境警備局は、407マイル(651キロ)の範囲でフェンスの取り換え、あるいは予備フェンスの取り付け工事の実施も求めている。「国境の壁」拡張計画がまだ正式に公表されていないため、同氏は匿名を条件とし、AP通信の取材に応じた。
トランプ氏は、大統領の任務の中核として、メキシコとの国境における「壮大で美しい壁」の建設を公約としていたが、建設地、着工時期、費用についての詳細を明言することはほぼなかった。しかし今年になってトランプ政権は、テキサス州及びカリフォルニア州の74マイル(118キロ)の範囲における、フェンスの新設・交換費用として、16憶ドル(約1,771憶円)の予算を要求。関係者らの話によると、来年にはさらに16憶ドルを要求する可能性もある。
先程の政府職員によると、ウォール・ストリート・ジャーナルが最初に報道したこの10年計画は、上院議員との話し合いにおいて、税関・国境警備局に対し、国境の安全保障に向けどのような対策を実施するのかという質問があがったことから作成された。
国境の安全保障対策を巡る議論は、幼少期に米国に到着した移民への執行延期措置(Deferred Action for Childhood Arrivals, DACA)というオバマ政権期のプログラムにより、強制送還を一時的に免除されている80万人に対する法的地位の付与などを盛り込んだ移民関連法案について、議会で協議が過熱したことから派生した。
トランプ氏は昨年、DACAの終了を宣言したが、法的措置の実施には、議会に3月までの猶予を与えている。
アリゾナ・リパブリック紙の広報担当、ジェーソン・サミュエル氏が言うには、国境の安全保障対策としての壁拡張計画は、ジェフ・フレーク米上院議員の要請を受けて策定された。
ある政権関係者は、協議に参加した議員からの要請を受け、計画文書が作成されたことを認めた上で、「国境の壁」建設費を始めとする安全保障対策費用の拠出については、あらゆる移民関連法案に盛り込まれることになるはずだと言う。計画がまだ正式に公表されていないため、同氏は匿名を条件として取材に応じた。
キルスティン・ニールセン米国土安全保障長官は今月9日、AP通信の取材に対し、DACA適用者に対する新たな保護を含む、あらゆる法案の中でも、この計画に「最優先に」取り組む意向を述べた。同氏はまた、亡命申請の処理や、移民当局に協力する地元警察への対応といった点に、「抜け穴」がないようにしたいと語った。
ニールセン氏によると、政権発足後2年間に要求したフェンス建設費用、32億ドル(約3,543憶円)は、頭金に過ぎない。
そして、「これで我々が必要としている壁の全部を賄える訳ではないが、ここがスタートだ」と述べている。
トランプ氏は、壁にかかる費用の支払いをメキシコに要求しているが、メキシコ側はそれを断固拒否しており、壁が建設されれば、その費用にアメリカ国民の税金があてられることはほぼ間違いないだろう。
先程の政府関係者によると、関税・国境警備局の作成した文書では、新たな国境対策費用として、合計330憶ドル(約3兆6,544億円)を要求。その内訳は、壁に180憶ドル(約1兆9,933億円)、技術・用具一式に57憶ドル(約6,312憶円)、道路の建設・メンテナンスに10憶ドル(約1,106円)、新たに採用する国境警備隊員5,000人と、国境検問官2,500人を始めとする人件費に85憶ドル(約9,413憶円)となっている。
問題の文書において、壁拡張工事の実施場所は明記されていない。
By ELLIOT SPAGAT, San Diego (AP)
Translated by t.sato via Conyac