「ユーザの利用時間は減るだろう」それでも改革に乗り出したフェイスブック

Noah Berger / AP Photo

 フェイスブックは、利用者がさらに「有意義な」時間を過ごせるよう、コンテンツの表示方法を調整している。これによりフェイスブックでコンテンツを配信中の出版社や報道機関が、痛手を負う可能性がある。

 フェイスブックは以前にも、利用者がフォローしている企業ページやセレブの投稿よりも、利用者同士の個人的なやり取りに重きを置くという方針を示していた。しかし今回は、利用者が情報を受動的に消費するのではなく、より積極的に参加できる投稿を目立つように表示するとしており、大幅な方針転換となりそうだ。

 フェイスブック社は、結果的にフェイスブックの利用時間が減少するだろうと述べている。

 フェイスブック社がこのような改革に乗り出したのは、ソーシャルメディアが利用者にとって憂鬱の種となったり、孤独の原因になったりするという批判を受けてのことだ。

 今後はフェイスブック上からブランドや企業ページ、報道機関による投稿が減り、個人の投稿が増えるだろう。さらに、フェイスブックが「受動的」とみなしている動画も、減らされる見込みだ。

 なぜなら利用者がフェイスブックでそのようなコンテンツを閲覧したとしても、それ以外に、コメントを残すなどの何らかの操作を行うとは限らないためだ。

 フェイスブックのCEOを務めるマーク・ザッカーバーグ氏は今月9日にコメントを投稿し、「調査の結果、ソーシャルメディアを使って大事な人々と繋がりを持つことは、幸福度に良い影響を及ぼすことがわかった」と述べた。

「私たちはより強い結び付きを感じ、孤独感が和らぐ。そしてこのような感情と、長期的な幸福度及び健康度には相関関係がある。しかし一方で、記事を読んだり動画を見たりといった受動的な行為には、それがいかに面白く、情報満載のコンテンツであったとしても、同様の効果はないだろう」

 フェイスブックが改革を進め、フェイスブックが「有意義」だとみなす投稿を目立つように配信し、その他の投稿の優先順位を下げるようになれば、大勢が利用する主要な情報源というソーシャルメディアの持つ大きな役割が、縮小されることもあり得る。

 広告については、変更を予定していない。「有意義」か否かに関わらず、利用者には従来通りの広告が配信される。しかし広告料を払わずに、集客目的でFacebookを利用している企業にとっては、今回の方針転換は痛手となるだろう。

 長きに渡りフェイスブックは、「フィルター・バブル」を作り出したことにより、友人同士の間でエコー・チャンバー効果を生じさせ、同じ考えを持つ人々が、プラットフォーム上で仲間の投稿を読むうちに、自身の考え方を増幅させるという現象を引き起こしたと批判されてきた。

 しかしフェイスブック社によると、オフラインで友人を作り、交流する時にも同様の現象が起こる。また同社が実施した調査の結果、フェイスブックの利用者は、他のどの場所よりも、そのプラットフォーム上で、多種多様な意見に触れることができると言う。

 フェイスブック社は、外部へのデータ提供を厳重に管理しているため、この調査結果を独自に検証することは難しい。

 方針転換に着手する前の1年間は、ロシアがフェイスブックを利用して2016年のアメリカ大統領選挙に介入していたことを受け、米議会の公聴会でその方法を問い質されるなど、フェイスブックにとっては苦難の年であった。フェイスブックの元幹部や投資家からは、フェイスブックを始めとするソーシャルメディアサイトが、社会の役に立ち、利用者の精神に効果的であるどころか、どれほどの害を与え得るものか指摘する声があがっている。

 ザッカーバーグ氏は今月上旬、(2009年以降、毎年発表している)今年の「個人的な抱負」は、フェイスブックの問題を解決することだと宣言。

 ザッカーバーグ氏によると、「フェイスブックがやるべきことは山ほどある。例えばフェイスブックのコミュニティを、嫌がらせやヘイト行為から守ること、国家による介入を阻止すること、そしてフェイスブックでより充実した時間を過ごしてもらえるようにすること」などがある。

 ミスや嫌がらせが一切起こらないよう予防することは不可能だが、それにしてもフェイスブックは、理念を遂行し、悪用を防止する上であまりに多くの間違いを犯したと、ザッカーバーグ氏は述べている。

By BARBARA ORTUTAY, New York (AP)
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP