ドイツ若者言葉大賞、英語混在の「ダス・クレイジー」に 意味と使い方は?

 ドイツの若者の間で最も流行した言葉を選ぶ「Das Jugendwort des Jahres 2025」が発表された。大賞は「ダス・クレイジー(das crazy)」。インターネット文化の影響が色濃い流行語で、言語の変化の速さを示す表現だと評されている。

◆世代限定の投票で1位に 正しい使い方は?
 若者言葉の流行語大賞とも言えるこの賞は、2008年からドイツの出版社、PONSランゲンシャイトが主催。当初は審査員による選考だったが、2020年以降は11歳から20歳までが対象のオンライン投票となっており、今年は約200万票が集まった。大賞に選ばれたのは「ダス・クレイジー(das crazy)」で、全体の35.7%の得票を得た。

 あえて訳すなら「それは狂っている」ということになるが、そもそも狂気じみたことや不条理なことへの驚きを表すには「Das ist verrückt」という表現があるとユーロ・ニュースは指摘する。しかし若者の用法はそれとは異なり、PONSランゲンシャイトの公式説明では、どう返事をすればいいか分からない場合、返答する気がない場合、あるいは単に会話を続けるための合いの手として使うとされている。

◆文法無視で英語もミックス ネットを象徴する表現
 「ダス・クレイジー」は、年配者の耳には不自然に響くとされる。定冠詞dasの後に必要な動詞istが省かれ、英語のcrazyと組み合わされているためだ。スイスのブルー・ニュースによれば、「クレイジー」自体は長年若者語として使われてきたが、動詞を省略した形は比較的新しいという。

 しかし、この言葉の面白みは、意図的に言語のルールを外している点にある。ミームやインターネット文化から生まれたとされ、チャットやソーシャルメディア上でも広く使われる。こうした使い方が広がったことで、若者言葉の象徴として選ばれた側面もある。

 PONSランゲンシャイトは、今年選出された語にはこれまでの傾向と同様に英語の影響力が強く、さらに言語を簡略化する傾向が浮き彫りになったとしている。特に「ダス・クレイジー」は、まさに時代の潮流を捉えた言葉であり、この賞の目的に合ったものだと述べている。

◆新語続々! 社会全体への影響は?
 賞のキャンペーン責任者、パトリシア・クント氏は、若者の流行語ほど若い世代の精神を鮮やかに捉えるものはないと述べる。毎年出版社を驚かせる新語が生まれており、言語の変化の速さがうかがえるとした。さらに投票行動からも多くのことが読み取れると指摘。実に88%がスマホ経由で投票ページにアクセスしており、若者の流行語は移動中、オンライン、そして日常生活といった実際に使われる場所で誕生すると述べている。

 もっとも、こういった特定の世代だけの流行語が、どの程度社会に定着するかは気になるところだ。ドイツ語学者のニルス・ウヴェ・バーロ氏によれば、若者言葉を大人が使う場合は迎合的に映ることが多く、さほど利用されないと見られている。しかし、今日の言語は過去数十年の若者言葉が凝縮されたものだと同氏は説明し、中期的には一般の言語に影響を与えることは明らかだとしている。(ブルー・ニュース)

Text by 山川 真智子