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生活水準の高い国・地域トップ20 一人当たりGDP(PPP)

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一人当たりGDP(購買力平価=PPP)は、各国の物価差と為替の揺れを調整し、特定の基準年・基準国の購買力に換算した「国際ドル」で一人当たりの経済規模を測る指標だ。この指標では、市場為替レート(名目為替)の変動に左右されにくい「平均的な生活水準の目安」がわかり、サービス価格の違いも反映され、国・地域間の実力比較に適している。一方、あくまで平均値のため分配の偏りは直接は示さず、小規模経済では資源収入や本社機能の集中が数値を押し上げることがある点に留意したい。

この記事では、国際通貨基金(IMF)が2025年4月に公表した最新推計に基づき、一人当たりGDP(PPP)の上位20の国・地域を第20位から1位まで順に紹介する。

◆20位 スウェーデン 7万4902ドル

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スウェーデンは、厚い社会保障と競争力の高い産業基盤が両立する稀有な経済だ。税負担は高いが、保育・教育・医療・再訓練への公的支えが労働参加と生産性を押し上げ、家計の可処分所得を底上げしている。

製造業では自動車、産業機械、医薬・医療機器、ICTが輸出をけん引。スタートアップの集積やキャッシュレスの浸透、脱炭素投資も進み、物価高や通貨安の局面を経験しつつも、購買力ベースの生活水準の高さを保っている。

◆19位 ベルギー 7万5846ドル

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ベルギーは欧州の政治・経済の結節点だ。ブリュッセルに欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の中枢機能が置かれ、国際機関・企業の本部機能が集積する。アントワープ=ブルージュ港は欧州屈指の規模を誇る海上ハブで、内陸市場と世界を結ぶ物流の強みが産業競争力を支える。

化学・製薬の巨大クラスターが形成され、港湾・空港を生かした温度管理網とともに高付加価値の輸出をけん引している。薬品の輸出額は直近年でも高水準で、外需の下支えとなる。エネルギーでは原子力の長期運転延長で電力の安定供給と脱炭素の両立を図る方針が進み、マクロの不確実性の中でも足腰の強さを示す。

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Text by 切川鶴次郎