『鬼滅の刃 無限城編』海外で支持98% 批評家・観客ともに 革新的ビジュアルで魅了

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 アニメ映画『鬼滅の刃 無限城編』が海外で極めて高い評価を得ている。北米では公開初週末にアニメ映画として過去最高のオープニング成績(約7000万ドル)を記録した。上映時間2時間35分という長尺ながら、革新的なビジュアルと感情に訴える物語で世界の観客を魅了している。

◆批評家と観客の98%が支持
 人気漫画を原作とするアニメシリーズの劇場版最新作『鬼滅の刃 無限城編』が、海外で記録的な評価を集めている。物語は、主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)と鬼殺隊(きさつたい)の仲間たちが、敵の総大将・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)の本拠地「無限城」に引きずり込まれ、ついに最終決戦に挑むというものだ。

 アメリカの映画評価サイト「ロッテン・トマト」によると、29日現在、批評家指標「トマトメーター」は98%(56レビュー)。観客スコアも98%(1万件超の検証済み評価)に達し、批評家と一般の双方から圧倒的な支持を得ている。

◆エッシャーの錯視画×日本建築の融合
 各メディアがとりわけ注目するのは、無限城の革新的なビジュアル表現だ。鬼の本拠地である無限城は、木造建築が無限に続く異空間として描かれる。アメリカのエンタメ誌バラエティは、この空間をM.C.エッシャーの錯視画や、今夏の『スーパーマン』におけるレックス・ルーサーの“異次元空間”演出を想起させる構造だと評し、尽きぬ橋を駆け、巨大な木造構造のあいだを落下していくようなダイナミックな移動表現の新鮮さに注目した。

 イギリスのガーディアン紙も同様に評価する。無限城は「M.C.エッシャーの終わりなき階段に日本的な感性を加えたもの」であり、襖や障子が鬼殺隊を想像を超える危険に陥れる“罠の扉”として機能する演出が、「美しくアニメ化された光景」の完成度を押し上げていると称賛した。

◆「悲劇的な物語」が北米の観客の心を掴んだ
 本作が商業面でも大きな成果を上げ、北米でアニメ映画として過去最高のオープニング記録を樹立した。成功の要因はビジュアルだけではない。同誌は悲劇的な要素が効果的に機能し、観客が戦闘に感情移入する理由を与えていると指摘。敵キャラクターの猗窩座(あかざ)の過去に長い尺を割く構成は、激しい戦闘から一時離れるため観客の予想とは異なる一方で、物語にさらなる感情の深みを与えていると肯定的に評価した。

 アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、物語の舞台は善悪が対峙する「おなじみの戦場」としつつ、一般の観客にとっての主な見どころはビジュアルだと指摘。情感豊かな人物を印象派風の背景(野の花が広がる原や霧の墓地)に配する画づくりが、凝った技名よりも強い印象を残すと評価した。また、世界観や設定は複雑でも、連帯と利己、忠誠と裏切り、愛と憎しみといったテーマは追いやすいと述べている。

 ガーディアン紙は本作を「壮観な作品」と位置づけ、「この素晴らしい作品が、今後確実に訪れるものの見事な前触れとなっている」と続編への期待を示した。さらなる興行記録の更新にも注目が集まっている。

Text by 青葉やまと