従来の生分解性を超える性能 日本発の「海で消えるプラスチック」
画像はイメージ( Carl Campbell / Flickr )
プラスチックごみによる海洋汚染やマイクロプラスチック問題は世界的に深刻さを増しています。
【動画】塩に触れると崩壊 環境負荷ゼロを目指す次世代プラスチック
海で自然に戻る次世代プラスチック
従来の生分解性プラスチックは土壌では分解するものの、海水中では分解が遅く、十分な解決策にはなりませんでした。
この課題を解決するために、日本の研究チームが、海水に触れると速やかに自然に戻る新しいプラスチックの開発に乗り出し注目されています。
その成果は、国際科学誌『Science』に掲載されました。
開発を主導したのは、東京大学と理研創発物性科学研究センターの会田卓三グループディレクターです。
新素材は、プラスとマイナスに帯電した二種類の原料を組み合わせてつくられ、磁石のように強く結びつきます。
そのため石油由来プラスチックに匹敵する強さと柔らかさを持ち、加熱すれば容器や包装などに加工できるといいます。
こうして実用性を備える一方で、この素材は塩に非常に敏感です。海水に触れると結合がすぐにほどけ、素材は元の原料に戻ります。
戻った原料は微生物に分解されやすく、最終的には自然に吸収されるため、環境に負担を残しません。
実験では、海水に近い塩水に入れるとサイズや厚みに応じておよそ2〜3時間で溶解しました。
土壌中でも分解が進み、小片は約200時間で分解したと報告されています。
従来の生分解性プラスチックは完全には分解しきらず、微細なマイクロプラスチックとして残る例が少なくありません。
国連環境計画によれば、2020年だけで推定270万トンのマイクロプラスチックが環境に流出しており、その一部は人間の血管や脳などの臓器からも検出されています。
さらに世界のプラスチック廃棄物のうちリサイクルされているのは9%未満で、2040年までに汚染が3倍に増えるとの予測もあります。
新素材は依然として開発途上にありますが、会田氏は包装材をはじめとする日常生活に近い分野での実用化に期待。
研究者らも「環境中に残らない素材を使うことで、増え続けるプラスチック汚染の流れを変えられる可能性がある」と強調しています。




